落ち着きがない、動き回る我が子…“困った行動”への向き合い方がわかる「ADHD入門書」【書評】
近年は「発達障害」への理解が広まりつつあるが、我が子に発達障害の可能性があったり、確定診断されたりすると、どんな対処をしてい けばいいのか悩んでしまうもの。
『ADHDがわかる本 正しく理解するための入門書』(榊原洋一:監修/講談社)は、そんな時に頼ってほしいADHDを知るための入門書だ。
本書は不注意や多動性、衝動性などの特性が持続的に見られるADHD(注意欠如多動症)の基礎知識を学べる一冊。イラストを交えつつ、幼児期・学童期だけでなく、青年・成人期に現れやすい特性や困りごとも紹介。3本柱となる治療法も知ることができる。 ADHDは、生まれ持った特性だ。根本的な原因は、脳機能の偏りであると考えられている。失くし物が多い(不注意)、落ち着きがなく動き回る(多動性)、感情のコントロールができないなどの行動が見られるが、どの特性が強く現れるかには個人差があるという。
特性の現れ方3タイプ
①多動・衝動優位型…男児に多い。すぐに大声をあげるなど、多動や衝動性が目立つタイプ ②不注意優位型…女児に多い。不注意や物忘れが目立つタイプ ③混合型…ADHDの約8割がこのタイプ。不注意、多動性、衝動性の3特性が同程度に現れる
周囲が特性に気づくのは、2~3歳頃。だが、後にADHDと診断された子は1歳半の時点でほしいものを示す時に言葉や音声を発しない、10語以上喋らないなど、“ことば遅れ”が見られたそうなので、チェックポイントのひとつとして覚えておきたい。 学童期、ADHDの子は「問題児」と誤解されやすいが、本人はわざとトラブルを起こしているわけではない。そのため、叱られ続けると自尊心の成長に支障が出るだけでなく、向上心や意欲が湧きにくくなり、うつや行為障害(社会や大人に対する反抗的態度が著しくなること)などの二次障害を招くことがあるので、周囲は適切な接し方を心がけたい。 加えて、ADHDは他の障害を併せ持っているケースも多く、海外の調査では約46%がLD(学習障害)を合併していたそう。調査ではASD(自閉スペクトラム症)の併存率も6%あり、周囲はこうした知識を持ち合わせ、問題と捉えやすい行動を大らかに受け止め、適切なサポートを行っていくことが大事になる。 例えば、親が心がけたいのは本書で紹介されている「ペアレンティング」という子育て法。子どもの「心」を変えようとするのではなく、「行動」に着目して望ましい行動を引き出すのだ。 重要なのは、褒めること。何気ないことでも褒め、「それは望ましい行動だよ、もっとやってほしいな」というメッセージを伝え、子どもの望ましい行動を引き出していくのだという。 褒める時は、“その場ですぐ”を徹底。できて当たり前と思えることでも、繰り返し褒めてあげよう。 なお、ADHDの子にとっては“あるある”な“宿題が終わらない問題”は、親が「一緒にやろう」「わからないところは教えてあげるよ」などの声かけをし、「宿題をやろうかな」という気持ちを引き出してあげることが大切だ。 ADHDの子は苦手なことややりたくないことに対して腰が重くなる傾向が強く、ひとりで宿題に取り組み、やり遂げるのはハードルが高い。そのため、親は勉強中に気を引くものをできるだけしまい、ルールに従って宿題を始められたらスタンプやシール、ごほうびなどをあげて、やる気を出させることができるという。