なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 前編
デ・トマソ:パンテーラ(1971年)
アレハンドロ・デ・トマソ(1928-2003)氏は、息をのむほどゴージャスなクルマをデザインし、フォードからV8を購入してシートの後ろに詰めた。パンテーラには品質上の問題があったにもかかわらず、米国では高性能車に対する欲求が高く、デ・トマソに安定したキャッシュフローをもたらした。 信頼性が低かったためか、オーナーの1人であるエルビス・プレスリーはおそらく癇癪を起こして、パンテーラに向けて何度も拳銃を撃った。銃弾が役に立ったかどうかは定かではない。 フォードは1975年に米国への輸入を停止したが、欧州を含む他の市場向けには1992年まで生産が続けられた。
では、デ・トマソはどうなったのか?
デ・トマソは1975年にマセラティと合併し、マセラティの方が常に多産であったが、デ・トマソの販売も2004年に同社が消滅するまで細々と続けられた。その後、商標は売却され、2011年のジュネーブ・モーターショーにはデ・トマソのコンセプトカーが登場したが、それ以来音沙汰はない。
イーグル:タロン(1989年)
クライスラーは1988年、同年撤退したAMCを引き継ぐ形でイーグルを設立した。イーグルの車種は平均的で面白みのないものが多く、ブランドイメージの確率に苦しんでいた。唯一の例外はタロンで、三菱エクリプスと密接な関係にあるスポーツカーだ。四輪駆動システムと最高出力195psのターボチャージャー付き4気筒エンジンを搭載し、1989年に1990年モデルとして発売された。
では、イーグルはどうなったのか?
今にして思えば、クライスラーにはイーグルのような無名ブランドを置く余白はなかったし、イーグルに戦うチャンスを与えるだけの関心も資金もなかった。1990年代には次々とモデルが撤退し、イーグルの名前は1998年に消滅した。現在はステランティスがその名を所有している。タロンを生産していたイリノイ州ノーマルの工場は現在、電動ピックアップトラック・メーカーのリビアンが所有している。
ファセル・ヴェガ:エクセレンス(1958年)
ファセル・ヴェガは、英国のロールス・ロイスやドイツの高級車ブランド勢に直接戦いを挑むようなエクセレンスというモデルを導入し、世界のセレブリティに支持されたブランドである。逆開きのリアドア(観音開き)を持つ重厚なデザインから、手作業で作られたインテリアに至るまで、エクセレンス(excellence:優秀、卓越している)という名に恥じないものであった。ブランドの、そしてフランスの自動車産業全体のフラッグシップとしての役割を果たした。