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永田町は旧ソ連か? 河井前法相が「KGB」と呼ばれた理由

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Forbes JAPAN

「河井は永田町のダーティーな部分を泳いできた」

河井前法相をよく知る政界関係者はこう言う。 「人間誰だって、悪人になる可能性を持って生まれてくる。あいつ(河井前法相)の場合、自分の意思と環境のせいで、悪人になってしまった」。 自分の意思とは出世欲、目立ちたいという気持ちだ。英語があまり上手でもないのに、海外出張に出たがった。競争の激しい永田町で生き抜く方法として選んだのが、「カネと権力を持っている人間にくっつく。それも裏口から入って接近する」(同前)というやり方だった。政治家同士の会合や密告など、手段を選ばなかった。 また、その手段を許す環境が永田町にはあった。前出の関係者は「河井は永田町のダーティーな部分を泳いできた。カネや権力が幅を利かせる永田町の文化がなければ、あんな風にはならなかった」と語る。河井前法相に限らず、永田町では権力にすり寄るために、一部の記者がオフレコの記者懇談会のメモをこっそり提供するなど「密告行為」を手段として悪用する者はこれまでもいた。 アメリカなど諸外国の反応も散々だった。外交筋の1人は河井前法相についてこう呆れる。 「政策について関心がないというか不勉強。それでいて、後で会談の内容がゆがめられてリークされる。自然と、河井との会談を避ける空気が生まれていった」。河井前法相は徐々に孤立し、今回の事件を引き起こした。 しかし、本当の悪人は誰かという話になると、ある政界関係者はこう言う。 「あいつ(河井)は小悪人。みんな、あいつが悪い奴だとわかっていたから。だから警戒されもした。でも、本当の悪党は善人の顔をしているんだぜ」 在京の外交筋も同様の話をする。 「自分の国の外交官も同じだ。本当にタチが悪いのは、他の人が悪人だとわからない悪人だ。同僚たちのなかで、普段はまじめでごく普通の外交官がいた。しかし、あるとき、上司に同僚の悪口を言いふらしている事実を知った。この人物は家庭でも良き父、良き夫だった。 きっと、ウソや密告をゲームのように考えているんだろう。それで出世したり、カネを儲けたりすることが何で悪いんだ、と思っている。こういう連中には近づかないのが一番だが、普段善人面しているから始末が悪いんだよ」と苦笑いした。 河井前法相が現金を配りまくった相手は皆、異口同音に受け取りを認め、かつ「返そうと思ったが、忙しくて取り紛れた」「何度も断ったが、無理やりにポケットに入れられた」と証言している。しかし、この話を現役の警察官僚にすると、一般論としてだが、「みんな、嘘ですよ」と、笑うのだ。 「忙しくても、返す気持ちがあるなら、自分の家族なり秘書にでも頼んで突き返せばよい。受け取っていないと言ったら、容疑を否認することになる。証拠隠滅の恐れもでてきて逮捕されるじゃないですか」 「通常、お金を受け取った連中はしょっちゅう『あいつが認めた』などと連絡を取り合い、もう逃げ切れないとなると、一斉に認める。警察もそんなに大量の政治家を逮捕できないだろうという計算も働いているのです」 政界の関係者たちによると、河井前法相を「便利使い」していた連中もまた、永田町に残っている。河井前法相の口利きで資金援助の恩恵を受けた者、情報を収集してもらった者たちを法律違反に問うことは難しいだろう。 欲をかいた小者は罰せられるが、利用した連中は罪に問われることはない。こんな話を聞いているうちに思い出したのは、往年の名画、黒澤明監督の映画「悪い奴ほどよく眠る」だったことは言うまでもない。

牧野 愛博

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