路面電車・バスの運賃均一エリア拡大、240円に値上げ…「改定なければサービス維持厳しく」
広島電鉄や広島バスなど交通事業者7社は来年2月をめどに、広島市中心部を走る路面電車、路線バスの均一運賃エリアを拡大したうえ、運賃(大人)を現行の220円から20円値上げして240円とする。燃料費高騰や乗務員の賃金アップなどへの対応に加え、コロナ禍による収入減の回復が狙い。値上げは2022年11月以来約2年ぶり。(山下佳穂、柴山倫太朗) 【地図】240円均一エリアの境となるバス停
対象は路面電車全8路線とバス62路線。均一運賃エリアは、いずれも同市東区の中山踏切、不動院、牛田早稲田の各バス停や、西区の大芝町バス停方面などへ拡大。南区のマツダスタジアム前バス停も含まれるようになる。一方、路線の短さなどから運賃が160円に抑えられていた広島電鉄白島線は、均一運賃の対象となり、エリア内最大の80円の値上げとなる。
市は、10月22日に交通事業者や識者でつくる市地域公共交通活性化協議会で、運賃改定の計画案を説明。市民からの計画への意見も踏まえ、11月29日に同協議会の分科会を開き、中国運輸局への申請を目指す。
市などによると、市内の電車・バス事業はコロナ禍以降、乗客がなかなか戻ってこないなど厳しい経営状況が続く。車両の更新、維持は物価高騰の影響も受ける。中でも、乗務員ら人員の確保は、地方都市を中心に全国で急を要する課題となっている。
待遇改善や初任給改定などが急がれ、その原資を生む値上げはやむを得ないという。値上げで路線バスは27年度までに、11億1200万円の増収が見込めるという。
広島電鉄の進矢(しんや)光明・交通政策課長は「運賃改定がなければ収支改善を図ることができず、現行のサービス水準を維持することが難しくなる」と訴える。
また、広島バスの清水雅秀・事業推進課長も「当社の路線は市内が中心で、国の補助が受けられる対象となっておらず、運賃収入しか原資を確保できない。安定的な人材確保のために運賃値上げは必要」と理解を求める。
一方、路面電車やバスの利用者は、地域によって更なる負担を強いられることになる。買い物などで日常的にバスを利用する広島市西区の女性(86)は「様々な物価が上がる中、交通機関も値上げしてしまうのは残念で、生活が圧迫される人も増えると思う」と心配する。