「3度目の緊急事態宣言は避けるべき」経済学者が推計、医療と経済のダメージを最小限に抑える方法は?
感染拡大だけでなく、人の流れと経済活動への影響をモデルに
まだ感染しておらず免疫のない人(susceptible)、現在感染している人(infected)、回復して免疫が生じた人(recovered)。 これらの値をもとに感染症の流行を推計するSIRモデルは、京都大学教授で理論疫学者の西浦博さんも用いており、多くの人の注目を集めた。 仲田さんらもこのモデルを使用しシミュレーションを行っているが、経済活動への影響を算出するため、人との接触と経済の関係をモデルに取り入れたという。 このモデルの違いについて、仲田さんは以下のように説明する。 「我々のモデルでは、感染率が人流指数(人がどのくらい外出活動しているのかという指標)とリンクしており、人流指標は経済活動が活発であるかどうかとリンクしています。人が交流することで生まれる感染は、人出が減少すれば減少します。経済活動を行うためには、ある程度人が外に出ていることが必要です」 「このように経済活動と感染症をつなげてモデルに入れると、経済活動をこのくらい制御したら、感染者数がこのくらいで推移するだろうという予測が可能になります。そこが、西浦さんのモデルとの大きな違いです」
最も重要なのは再度の緊急事態宣言発出の回避
仲田さんと藤井さんは今回のシミュレーションで、東京における緊急事態宣言解除の基準についても分析し、シナリオを提示している。 急速に感染者数を減らし、2月下旬のタイミングで1日あたりの感染者数が250人を下回った状態、もしくは緩やかに感染者数を減らし、3月中旬に1日あたりの感染者数が500人を下回った状態での宣言解除が望ましいシナリオだ。 なお、急速に感染者数を減らしたとしても、1日あたりの感染者数500人のような高い解除基準では、その後再び緊急事態宣言が必要となるとしている。 また、緩やかに感染者数を減らした場合、1日あたりの感染者数が250人を下回るような低い解除基準で宣言を解除すると経済的損失が大きい割にあまり命が救えないとの見通しも示している。