巨大な教会「メガチャーチ」「ギガチャーチ」が驚異の成長、米国でいま何が起きている?
運転時間を考慮する
メガチャーチやギガチャーチは、往々にして必然的に不動産業に手を出すことになる。航空機格納庫のような巨大な集会所を次にどこに建てようか決めるとき、教会はただ適当に地図めがけてダーツを投げるようなことはしない。 セントラル教会は、最初は1カ所だけで礼拝を行っていたが、1990年代半ばにラスベガスから南に16キロメートル下ったヘンダーソンに移転した後、成長を始めた。ゆっくりと開発が進んでいた郊外の町は、教会の指導陣に魅力的に映った。長年セントラル教会に通い続けてきた信者たちの住む地域からそれほど遠くなく、しかも約32万平方メートルの土地に新たに教会を建てることができる。 その後10年間で郊外は爆発的に拡大し、さらに遠くからも人々が教会に集まるようになった。すると、運転時間や交通量の問題で、礼拝に通うだけでも困難になる。 それならば集会所を新たに開いてはどうかという案が出た。問題はどこに開くかだ。 「信者が費やす時間でスケジュールを考えてみました」と、教会の副牧師を務めるボブ・ウッド氏は言う。「『45分運転して礼拝に来てください』と言えば、礼拝には来るかもしれませんが、それ以上のことはしないでしょう。けれど、運転時間が15分か20分で済むなら、教会で奉仕をしたり、少なくとも交わりに参加したりするようになるかもしれません」 「運転時間が短くなれば、教会に関わる時間が長くなる」とは、どこであれ小さな教会は昔から知っていることだ。 そこでセントラル教会も、ほかの集会所から15~20分離れている場所を探し始めた。 不動産業界に明るかったことが功を奏して、セントラル教会は現在、米国のネバダ州に2カ所、アリゾナ州とアラバマ州に1カ所ずつ、ほかにオーストラリアとメキシコにも集会所を持つ、米国で13番目に大きな教会に成長した。
人口動態が立地を決める
地域の人口統計、特に人口動態を調べて新しい教会や集会所の場所を決めるという戦略は、今では驚くほど一般的になっている。米テキサス州ダラスにあるプレストンウッド・バプテスト教会の牧師であるジャック・グラハム氏は、教会員数が増えて建物に収容しきれなくなった1990年代初期から、そのことに気付いていた。 「教会を移転しなければならなくなったとき、信者のなかにいた専門家に相談しました。すると、新しく教会員に加わった人の多くが、急速な人口増加が始まったばかりのプレイノに住んでいることがわかりました」 現在、プレストンウッド教会の会員数は1万7000人で、米国で21番目に大きな教会になっている。 人口統計学に基づいた同様の戦略は、大企業が移転先や新たに拠点を置く場所を考える際にも採用している。 「米グーグルや米IBMが、『優秀な人材を獲得するには、どこへ行くべきか』と考えるのと同じです」と、企業コンサルティングファームのクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドで職場と労働力分析を研究するエリオット・スカランジェロ氏は言う。「メガチャーチも同様に、『大きな教会を探しているけれど近くにないという人々がいる場所はどこか』と考えるでしょう」 そこで求められるのが、きめ細かい人口調査だ。 「ある地域の人々がどれほど頻繁に教会に通っているのか、また、信仰熱心だから通うのか、それとも単に近くに教会があるから通うのかを見極める必要があります。キリスト教のラジオ番組を聴いているけれど教会に通っていない人がいるなら、その人たちは何らかの理由があって近くの教会に行こうとしないのかもしれません」 「もちろん、ほかの人々よりも教会に行くという層が確かに存在します。例えば、ヒスパニック系は若い白人層よりも教会に通う傾向にあります。子どもがいる家族も、教会に通うことが多いです」 近くに新しく集会所を開こうと考えている大教会にとって重要なのは、やはり「運転時間の計算である」とスカランジェロ氏は指摘する。 「ただし、バランスが必要です。ほとんどの人が無理なく教会に通える範囲内に住んでいることが大切です。その範囲が集会所同士で近すぎても困ります。お互いで信者の取り合いになってしまいますから」