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地上イージス計画停止 「安全」何だったのか 地元山口県萩市や阿武町、国説明に渦巻く不信

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中国新聞デジタル

 16日の山口県萩市議会本会議。多くの報道陣がカメラを向ける中、市議から怒りの声が相次いだ。「安全と言っていたのに」「これまでの説明はうそだった」。河野太郎防衛相が計画停止を表明した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」関連の一般質問。藤道健二市長も「国からは大丈夫だと聞いていた」と答弁に不快感をにじませた。  計画停止の原因は、迎撃ミサイルを上空高く打ち上げるための推進補助装置(ブースター)の落下位置を制御できない問題が発覚したことだ。防衛省は、発射直後に3段あるうちの1段目(重さ約200キロ)が切り離される仕組みで、落下位置は(1)ミサイルの速度・飛翔(ひしょう)方向(2)上空の風向・風速(3)落下時の姿勢―で計算、制御できるとしてきた。  国は候補地の陸上自衛隊むつみ演習場がある同市と山口県阿武町での住民説明会でも「演習場内に確実に落とせる」と繰り返した。  ■「心配した通り」  ところが今月15日、河野防衛相は突然、導入予定のシステムはソフト、ハードの両面で不備があり「改修しなければ演習場内に落とせない」と説明。改修には10年以上の歳月と数千億円の費用が追加発生するため「合理的ではない」と計画停止を判断した。  住民たちは演習場近郊の集落に落ちる懸念や不安をかねて訴えていた。ブースターの問題を説明会で指摘し続けた阿武町の「町民の会」の吉岡勝会長(67)は「心配した通りだった。『問題ない』との他の説明もうそだったのではないか」と憤る。ミサイルに詳しい山口大の増山博行名誉教授(物理学)は「ブースターの形状に問題がある」と指摘。独立した制御装置や羽根が付いていないため落下の動きはコントロールできないという。「制御できないのは明らかで狭い演習場内に確実に落とすのは無理。契約前になぜ気付かなかったのか」と批判する。  イージス計画を巡っては国のずさんな調査や対応が目に付く。もう一つの候補地である秋田市の陸自新屋演習場では衛星写真利用サービス「グーグルアース」の地図データを使った演習場や周辺の調査で縮尺計算を間違えた。防衛省職員が説明の最中に居眠りをしたことも地元の怒りに拍車を掛け、19年7月の参院選では自民党現職がイージス反対を訴えた野党候補に敗北。国は新屋の配備断念に追い込まれた。  ■裏の意図指摘も  また、むつみ演習場でも周辺の高台の標高の算出を誤るなど不手際が露呈し、不信感を高めた。  萩市と阿武町での説明会に参加したこともある軍事評論家の前田哲男さん(81)は「ブースターの問題はあまりに初歩的ミスで見逃した歴代防衛相の責任は免れない。ただ、今回の取って付けたような説明はあまりに不自然で裏に何か他の意図がありそうだ」と話す。  前田さんは、強力な中距離弾道ミサイルの開発が各国で進む中、運用開始が大幅に遅れるイージスは「時代遅れの産物」との見方もあると説明。「防衛施策の変更に関する何らかの提案が米国からあったのかもしれない」と推測する。「既に巨額の税金をつぎ込んだ責任をどう取るのか。安倍晋三首相が納得できる説明をするべきだ」と求める。

中国新聞社

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