株価大暴落で「身代金」を要求された投資家たち…目線を変えれば大バーゲンセール【シニアのためのマネー講座】
【シニアのためのマネー講座】#107 「おまえのところの息子を誘拐した。今すぐ返して欲しければ、身代金200万ドルを払え」 「十割そば」に学ぶ投資術 割高なのを知っている地元の人は手を出さない? これは1996年に製作された、アメリカの映画「身代金」のワンシーンである。 これと同じようなことが現代社会でも起こった。8月5日、日経平均が史上最大の下落幅(4451円)を記録したからである。「身代金」を要求してきたのは証券会社。 「あさっての午前中までにお金を払わないと、おまえの持ち株をすべて損切りするぞ!」と、「映画」さながら、脅しをかけてきたのだ。 いわゆる「追い証」の請求である。資金の約3倍をかけられる「信用取引」では、証拠金以上に損をする場合がある。証券会社としては「取りっぱぐれ」がないように、あらかじめ証拠金の積み増しを要求するのだ。 「素直に従わないと、おまえの“子供”の命はないぞ!」と脅してくるのである。 一方、映画では、主演のメル・ギブソン演じる父親・トムが、それを逆手にとって奇抜な行動に出た。 「どうせ生きて帰ってこないのであれば、こうするしかない」 逆に犯人のクビに200万ドルの懸賞金を懸け、そのことをテレビ発表したのである。 株の世界で言えば、「損切りするならば、損切りすればいい。そんなことしたら逆に訴えるぞ!」と逆ギレしたようなもの。 もちろん、そんな道理は通じるわけもなく、証券会社は非情にも「強制決済」することになる。「損失確定」だ。今回の株価急落はそういった事情もあった。多くの投資家が証拠金不足に陥り、売らざるを得なくなったのだ。これが信用取引(レバレッジ)の怖さである。 でも、長期目線の投資家にとってみれば、この暴落は、いわゆる「バーゲンセール」。極端に割安になった優良株を拾うチャンスである。 こうやって資産家の人たちは、財を成してきた。短期的な目線の一般投資家とは明らかに違っているのである。 今回の暴落はシニアの投資家にとって、残り少ないチャンスでもあった。でも、人生、あと1回くらいは巡り合えそう。そのときこそ割安株を買って、子孫たちへの「冥土の土産」にするのだ。 そして、こう言われるだろう。 「おじいちゃん、ありがとう。もし、子供が誘拐されたら、これを売って身代金に充てるね」と……。 (黒岩泰/株式アナリスト)