「東芝の株主総会」をイギリスの経済紙が大々的に取り上げる理由 「日本に激震が走る」可能性も指摘
来る3月18日、東芝は臨時株主総会を開催し、同社の大株主が提案した2つの案を審議する。英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」はこの臨時総会の意義について、長文記事で解説した。 【画像】「東芝の株主総会」をイギリスの経済紙が大々的に取り上げる理由 日本企業の総会が国内外でこれほど注目されるのは珍しいが、それはなぜなのか──同紙の分析をまとめた。
日本の資本市場にとっての“MRI検査”
「フィナンシャル・タイムズ」は3月13日、「東芝の対決は、日本の大企業にとって大きな転換期になるかもしれない」と題した長文記事を掲載。同記事には、東芝のCEOである車谷暢昭氏の顔写真が大きく載った。 記事の要旨は、今回の臨時総会は東芝だけではなく、「日本の株式市場の今後にとって重要な事例になるだろう」という点にある。 「日本を代表する大企業のひとつ」と「グローバルな資産運用会社」の対決ともみられている今回の総会。コーポレート・ガバナンスは改善されたと5年前に主張した日本にどれだけの変化があったのか。同紙は、今日(こんにち)の日本の資本市場が健全に機能しているのかをチェックする「MRI検査」と表現した。 投資家は、木曜日に行われる総会の結果が「患者がどれだけ問題を抱えているか。そして、どれだけの問題が治療可能か」の見極めになるだろうと話している。
今回の騒動を理解する4つの質問
Q.臨時総会の発端は? 筆頭株主ら2社がアクティビスト(もの言う株主)となって、今回の臨時総会の招集を求めたのがきっかけとなった。 その2社とは、筆頭株主であるシンガポールの投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントと、2番目に大きな株主となる米運用会社、ファラロン・キャピタル・マネジメント(および、関連会社のチヌーク・ホールディングス)。 Q.何が問題になっている? 前出の2社が、採択を要求する株主提案は下記の通りだ。 ・エフィッシモ・キャピタル・マネージメント 2020年7月の定時株主総会で、議決権行使書の集計が適切ではなく、運営に問題があったと指摘。また、一部の株主には不当な圧力があったと主張し、調査のため、弁護士の選任を要求している。 ※エフィッシモは2020年6月に株主提案を行うも、7月に否決。しかし東芝が「一部の株主の議決権行使書が無効になっていた」と9月に公表したことをうけ、今回の臨時総会請求にいたった。 ・ファラロン・キャピタル・マネジメント 東芝の投資戦略に「突然で劇的な変更」があったが、株主の了承なく方針の転換は許されないと主張。約款を新たに盛り込むことに加え、5年分の営業キャッシュフローを株主に還元することを求めた。 東芝は、いずれの問題についても反対の構えを示していることを同社公式ウェブサイトで明記している。 Q.東芝とグローバル運用会社、どちらに分があるのか? 「もの言う株主」側の勢いが増していると、報じられている。少なくとも、ほかの2つの投資家はエフィッシモの主張に賛成していることが「フィナンシャル・タイムズ」の独自取材でわかっている。また、米国第二の公的年金基金「カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)」も賛意を示している。 東芝の別の主要株主は、CEOの仕事は「資本配分」と「ガバナンス」であるとし、エフィッシモとファラロンはそれらの点を疑問視していると語った。 Q.なぜ臨時総会の結果が、日本の株式会社にとって重要なのか? 日本の株式市場が今後、株主にとって友好的なものへと変わっていくのか、それとも古い日本のままでとどまるのか──今回の臨時総会の結果は、その問いの答えを示すものとしてみられている。 今回の件を契機に、投資家が臨時株主総会の開催を要求し、経営陣からの説明を求めることが主流になっていく可能性もある。木曜日に株主提案が通れば、日本の株式会社には激震が走るだろうと述べられている。