「資格で起業」はなぜ危ういのか?
■「資格で起業」の危うさ
独立起業する前に資格を取って起業しようと考えるとき、もっとも陥りがちなミスが「資格で起業しよう」と考えてしまうことです。これは過去の自分の否定になりかねない考え方です。 なぜ資格で起業しようとすることが誤っているのかを、これから詳しく解説していきましょう。 実は、このミスは私が犯した最初のミスでもあります。 私は行政書士として独立開業したのですが、行政書士で独立開業したことによって「行政書士の仕事以外をしてはいけない」というルールを自分で勝手につくってしまったのです。 業界全体で見ても、士業は専門の仕事以外の、たとえば本を書いたり、セミナーをしたり、交流会を開いたりといった仕事を特に嫌う傾向にあります。まるで純血主義のような専業主義です。私はこれを「悪しき時代の理想専業主義」と呼んでいますが、資格取得から開業までを考えると、どうしても「資格だけ」で勝負してしまう傾向にあるのです。 たとえば、ある人が行政書士で独立開業しようとしていました。セオリーどおりに「専業主義」で食べていくと公言していましたが、なかなか仕事にありつけません。そこで、その方に前職は何をされていたのですか、と質問したところ、「営業一筋で10年以上です」と返答されました。つまり、この方はせっかくの10年も培った営業経験を無視して、行政書士だけで起業しようと考えていたのです。 このように、資格だけで起業しようというのは、自分の過去の否定にもつながります。ですから、資格を取ったとしても、過去のキャリアが生きる方法を考えるのがベストだといえます。 資格を取るということは、私は独立開業に有利だと考えています。自己紹介するのにもスムーズになりますし、また信頼もされやすいという点も非常に大きな利点です。 ただし、資格に振り回されて、専業で起業しなければならない、と思考が変わってしまうのが資格の少し怖いところでもあります。資格業そのものがスペシャリストなので、無意識に専業主義になりがちです。あなたも理想専業主義にならないよう、ぜひ気をつけてください。 ちなみに、先ほどの行政書士は、営業に関するコンサルティングも業務のひとつとしてメニューに加えました。営業についてもわかる行政書士というのは、専業の行政書士と比べてなんとも魅力的です。ぜひあなたも、単に「有利」になるだけでなくその上を目指し、よい資格起業家になってほしいと思います。 横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士
■プロフィール
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ2,000人以上が参加。著書に『プロが教える潰れる会社のシグナル』(さくら舎)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、他多数。