日本学術会議、任命拒否めぐる誤情報の拡散に苦言。でも、会長と副会長が明言を避けた2つのこと
「日本学術会議」の新たな会員として推薦された学者6人の任命を、菅義偉首相が拒否したことをめぐる問題。日本学術会議の梶田隆章会長、菱田光一副会長、高村ゆかり副会長らは10月29日、学術会議の幹事会後に会見を開き、任命拒否の理由についての説明と6人の任命を改めて求めた。梶田会長は今回の出来事は「異常事態」であるとした上で、「著しい制約になっている」と説明。「未来志向の対話を政府と学術会議で行なっていく上で任命問題が妨げとなることを危惧している」と語った。【BuzzFeed Japan / 千葉雄登】
任命されなかった6名、政府の方針に異論を示してきた過去も
日本学術会議は各分野で日本を代表する学者が集まる組織で、政府から独立した立場から提言等を行う。 日本学術会議の会員任命を首相が拒否したのは、現在の制度に変更された2004年以降初めてのことだ。 任命されなかったのは以下の6人。 松宮孝明氏(立命館大教授、刑事法学) 小沢隆一氏(東京慈恵医大教授、憲法学) 岡田正則氏(早稲田大教授、行政法学) 宇野重規氏(東京大教授、政治学) 加藤陽子氏(東京大教授、歴史学) 芦名定道氏(京都大教授、キリスト教学) 松宮氏や小沢氏は、安倍政権下で成立したいわゆる「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法や「安法法制」に対して国会で反対意見を述べていた。 また、宇野氏や岡田氏、芦名氏も「安保法制」に反対する立場を示してたほか、加藤氏も同じく安倍政権下で成立した「特定秘密保護法」や憲法改正に反対していた。 いずれも政府の方針に異論を示してきた6名であり、政府の意に沿わない学者を排除する動きではないかとの批判が上がっている。
政府は理由を明かさず
菅首相はなぜ任命拒否したのか。 そもそも、過去の政府答弁で推薦制は「形式だけ」のものであり、法解釈上も政府側が「拒否はしない」「干渉しない」仕組みになっている、と明言されている。そのため、今回の任命拒否はこうした過去答弁と矛盾するとの指摘もある。 しかし、政府側は「解釈は変更していない」との立場だ。内閣法制局は野党合同ヒアリングで「憲法の規定に照らして行った時に、まさに任命権者たる内閣総理大臣が任命責任を負えるものではないといけない」と説明。「責任を負えないような任命権は行使できない」と、過去答弁との矛盾はないとした。 手続論的な面とともに問題視されているのが、その理由だ。菅首相は拒否の理由を明確には語っていない。 現状での説明は、「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」というもので、加藤勝信・官房長官も任命拒否の理由については、「総合的・俯瞰的観点」という表現を繰り返している。 菅首相は10月28日の国会答弁で「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りがでないことも踏まえた多様性を念頭に、私が任命権者として判断を行ったものだ」と語ったが、それ以上は踏み込まなかった。