なぜ 「ラーメン」 が日本で国民食になったのか…?調査してわかった《意外な事実》
日本の「国民食」の地位を確立したラーメン。麺やスープの個性を筆頭に、その魅力が語られることは多いが、今回はトッピングの雄で「チャーシュー」の魅力に、1ヵ月で78杯を食べつくした『おとなの週末』ラーメン調査隊が迫る。 【写真】東京駅「朝ラーメン」ベスト5店
浅草にあった、日本で初めてラーメン店
話は「そもそもチャーシューとはなんぞや?」というところからはじまる。 本来チャーシューとは、中国語で『叉焼』と書き、調味料と紅麹の酒粕を塗った肉塊を、大きな窯の中に吊るして焼いた料理だ。 そして日本に於いて、現在のラーメンに近いスタイルの料理を提供したのは、明治43年に開業の浅草『来々軒』であるというのが定説である。この店のラーメンには、叉焼が載せられていたようだ。 しかし、この店が人気を博すと、屋台のラーメン店も東京に登場。当然、叉焼を作る大きな窯などない。そこで、表面を焼いた肩ロースやロースを醤油味のタレで煮込む、いわゆる『焼豚』をのせるのが一般的となる。 ここで面白い現象がおきる。焼豚に「チャーシュー」と呼ぶ発音だけが残ったのだ。 この時点で、チャーシューは叉焼の束縛から解き放たれた、自由な発想の料理への第一歩を踏み出したのだ。これがチャーシュー進化黎明期。 時は昭和。日本中の街の中華料理店でラーメンが当たり前のように提供されるようになったなか、中華料理店とはまた違う、ラーメン専門店が全国に登場する。 すると鶏ガラやトンコツでスープをとるのと当時に、チャーシューに使用する肉塊も一緒に寸胴に入れて炊いちゃえば、肉からもスープをとりながらラーメン用のチャーシューも作れて一石二鳥なんじゃない?という極めて合理的な発想が登場する。
発音をいただいた、ラーメン仕様へ進化
スープをとったあと、そのままスライスしてチャーシューとしてトッピングするパターンと、炊いたあとに醤油ダレに漬け込むパターンの2つのパターンがあるにせよ、最初に表面を焼かず、醤油ダレでなくスープと一緒に炊くタイプのチャーシューである。 ここでラーメンのチャーシューには焼豚以外に『煮豚』という新しいスタイルが登場することになった。これがチャーシュー第一の進化である。 またこの方法で作るスープは、チャーシューにする肉に脂部分の多いバラ肉を使用することで、さらに脂が溶け込んだ味わいになる。そこでバラ肉をそのままだったり、ロール状に巻いたりしてチャーシューに使用する店も増えてきた。 この後のチャーシュー第二の進化(後述します)でのキーパーソンとなる『麺や 七彩』の店主・阪田博昭氏は、この煮豚タイプのチャーシューについてこう語る。 「ただスープをとるために肉を煮ると、肉自体はパサパサになる。そういう店も中にはありますが、博多など九州系のラーメンは、肉以外のトンコツだけで旨みやゼラチンを飽和状態まで引き出すので、煮たチャーシューがパサパサにならないんです」 チャーシューとスープ。そのトータルをデザインして作り上げるのが煮豚スタイルのチャーシューなのだ。 そして21世紀。現在も流行中の第二の進化が訪れる。スープをとるためとは一切関係ない、ラーメンにのせるためだけに考えられたチャーシュー、低温調理のチャーシューである。内部はレアのように薄ピンク色で、ジューシーかつやわらかいこのタイプを世間に広めたといわれているのが、先程登場した阪田氏である。 「低温調理のチャーシューを最初に出したのは、ウチではなく、千葉の本八幡の『菜』という店。肩ロースを使ったチャーシューです。ウチは2007年に始めましたが、バラ肉と、普通は煮るとパサパサになってしまうモモ肉も使った。モモ肉も低温調理ならばジューシーに柔らかく仕上がる。なのでブ厚く切っても柔らかい。そこが当時『奇跡のチャーシュー』とかいわれた由縁ですね」 モモ肉は他の部位より価格も安いが、調理法でそれ以上の食味を引き出す。経営と味の一石二鳥である。 ほぼ同時期にもうひとつの進化もおきる。炙りチャーシューである。冷めたチャーシューを温かくしつつ、香ばしい香りが食欲をそそる第三の進化である。 そして令和の今。低温調理、炙り、部位の多様化、それらの混合型など、第四の進化とも言える混沌時代の中、阪田氏に今後登場しそうな新チャーシュースタイルを伺った。 「そろそろ完成しそうなのですが、コン……」 第五の進化は、みなさんでお腹グーグー鳴らしながら想像してみてください。
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