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「意味不明で草」前代未聞のExcel実用書×異世界ファンタジー小説に上がった歓声

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PHP Online 衆知

処理される無数のVLOOKUP

さて初日から厳しいことになった。さっきの研修現場で見た感じ、関数ってオブジェみたいなもんだと思っていたけど、あれは完全にモンスターだ。動いてるし、襲いかかってるし。そんなところに1人で放置されるとは。 「まあいけるっしょ、VLOOKUPなんて慣れたもんだし!」 おれは自分に言い聞かせるようにそう言って、おそるおそるイノウエと呼ばれた女性に近づいていった。 VLOOKUPたちはどことなく威嚇するような動きをしつつ、おれが近づくとじりじりと後退して道を開ける。イノウエの前までくると1匹が手首で立ち上がり、体というか指を広げて立ちはだかり、体を震わせてくる。キモい、かなり。これに触れないといけないのか。 「く、くそ……、もうしらん! ブ、ブイルックアップ!」 立ちはだかるVLOOKUPの人差し指を握って唱えると、VLOOKUPは元いたのであろうセルまで飛んでいった。無事処理できたようだ。イノウエの周りのVLOOKUPたちは恐れを感じたのかたじろいだように見えた。いける。いけるぞ。

「VLOOKUPごときで苦労してんじゃねえ」

転生したらスプレッドシートだった件 イノウエを見ると、足元と太ももにVLOOKUPがとりついていた。イノウエはたぶん恥辱で泣いていた。おれはなんだか緊張してしまって取引先と話すような感じで言った。 「すいません、タカハシと申します。初対面で失礼いたしますが、VLOOKUP処理させていただきます」 「ひゃ、はい。よ、よろしくおねがいします」 「ブイルックアップ」 足元のVLOOKUPの手首をつかんで処理した。そいつもどこかへ飛んでいった。よし、いける。次に太ももを、いや太ももにとりついているVLOOKUPを見る。気まずい。初対面の女性のパーソナルスペースに踏み込んでいる。そういうのは得意じゃないんだ。イノウエ、メガネで仕事のできそうな顔をしている。泣いているがすらっとした黒髪がきれいな美人だ。おれと同じぐらいの年だろうか。胸は、いやイノウエの体のことはいい。VLOOKUPだ。 「ではもう1匹失礼いたします」 「は、はい……」 なんでこいつ顔を赤らめてるんだ? 照れるからやめてくれ。これってあとでセクハラとかで訴えられたりしないよな? だいたい誰に訴えるんだ? Googleか? こんな世界に転生させておいてセクハラでクビってことはないと思うがどうなんだろう。それともサイトウか? というかサイトウまだかな? そう思って振り返ると、無表情に金属バットを振りかぶっているサイトウがすぐ後ろにいた。 スコーーーン サイトウが振ったバットは気持ちの良い音を響かせてVLOOKUPをすっ飛ばした。サイトウが小さく「ブイルックアップ」とつぶやき、関数を処理した。 「サイトウさん! 危ないじゃないですか!!」 バットを目の前で振られたイノウエが抗議する。 「うるせえ、助けてやった礼もないのか。だいたいVLOOKUPごときで苦労してんじゃねえ」 「えー、だってわたし、INDEX/MATCH派なんですよー」 おいおいまじかよ。INDEX/MATCH派なのはいいが、VLOOKUPを書けないなんてことExcel職人でありえるのか。 「VLOOKUPってぜんぜん使えないじゃないですか。引数に何列目か書くのダサすぎませんか? 検索列が左にないといけないのも最悪ですよ。おまけに重たいし。あんなの使ってるうちは初心者って感じですよね~」

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