「本当に二人の命と、遺族の無念と向き合っているのか」池袋暴走事故、初公判に参加した遺族の思い
東京・池袋で昨年4月、高齢者が運転する車が暴走し、当時3歳の松永莉子さんと母親の真菜さん(当時31)がはねられ死亡した「池袋暴走事故」。2人を死亡させ、男女9人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の初公判が10月8日、東京地裁(下津健司裁判長)で始まった。朝日新聞によると、飯塚被告は「車になんらかの異常が生じて暴走した。アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶している」と言い、起訴内容を否認した。【BuzzFeed Japan/伊吹 早織】 【動画】池袋暴走事件、初公判に参加した遺族の思い
「本当に二人の命と向き合っているのか」
妻子を亡くした松永拓也さん(34)は、事故直後から報道陣の取材に応じ、交通事故の再発防止を訴えてきた。飯塚被告に対する厳罰を求めて、昨年実施した署名活動は40万筆近い賛同が寄せられ、全国的に注目を集めた。 10月8日の昼、松永さんと真菜さんの父・上原義教さん(63)は、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。被告が否認したことを受け、松永さんは「予想していたこととはいえ、残念でなりません」と語った。 「本日初めて間近で加害者を見たわけなんですけども、改めて加害者の口から、アクセルを踏み続けたという事実ではなく、あくまで車の不具合だという主張を述べました」 「暴走を止められなかったことは申し訳ないと思うが、あくまで車の不具合だということを言っていた。最初にこちらに対して申し訳なかったという言葉は述べられていましたけれども、本当に妻と娘の命と向き合っているのか。私たち遺族の無念と心の底から向き合っているのか」 「今日あくまで私が受けた印象では、とても向き合っているとは思えませんでした」 上原さんは終始声を震わせながら、「あなたの息子や孫が同じようになったらどうなの?と問いかけたいくらいだった」と語った。
二人と共に裁判に参加したい
今回の裁判では、松永さんら親族6人が被害者参加制度を使って裁判に参加する予定だ。 松永さんらの代理人によると、人数が多いため傍聴席の一部が被害者参加人のために確保されており、本来は、松永さんの父親の誕生日に撮影したという遺影を手に着席する予定だった。 しかし、裁判所から被害者参加人として参加するのであれば、遺影を持つことはできないと言われ、遺影を持つか被害者参加をするか選ぶよう指示されたという。 松永さんは「遺影を手にして二人とともに裁判に参加することも、被害者参加制度を使って被告人に質問したりすることも、遺族にとってはどちらもとても重要」と言う。 代理人の上谷さくら弁護士は「事件から1年半で迎えた初公判で、遺族にとっては緊張感を伴う日。こうした選択を裁判所から迫られ、声を上げなければいけないことは心理的に大きな負担になる」と言い、こうした対応を変更するよう申し入れを続けていくと述べた。 松永さんは今後について「真実をしっかりと述べてもらうことが、遺族のこれから、生きていかねばならない遺族の回復にも繋がると思いますし、真実がわかることで、この先こうした事故を防ぐためにはどうしたらいいんだろうという議論にも繋がると思う」と話した。