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国家非常事態宣言は深刻か? トランプ氏の米メキシコ国境、壁建設の行方

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The Guardian

【記者:Tom McCarthy】  米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は議会の承認を得ずに、メキシコとの国境の壁建設予算を確保するために、国家非常事態を宣言した。この国家非常事態宣言は、何を意味するのだろうか。 ■国家非常事態宣言は、深刻な出来事か?  この問いに対して、分析は二分している。一部の法律専門家は、非常事態宣言は大統領が財源を確保するために強引に行った権力掌握であり、非常に警戒すべきだと指摘する。米国憲法は、唯一議会に予算編成の権限を与えており、その議会はトランプ氏が要求する国境の壁の予算を確保することを拒否した。このため、トランプ氏は予算編成権を議会から奪おうとしているようだ。  だが、これはそれほど深刻な事態なのだろうか?  法律専門家の多くはやや楽観的な見方を示しており、法的根拠が怪しい非常事態宣言は、法廷で否定されると考えている。また下院議長を務める民主党のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)氏は、非常事態宣言を取り消す決議を議会に求める権限を有している。この採決が行われれば、たとえ採択されなかったとしても、共和党にとって政治的な代償は高くつくだろう。  非常事態宣言に対し、冷静に対処すべきだとの声も上がっている。米国では1976年に国家緊急事態法(National Emergencies Act)が制定されて以来、大統領による国家非常事態宣言の発令は59件ある。つまり国家非常事態は、度々発令されてきたのだ。最近では昨年11月、「ニカラグアの混乱に関与している特定人物の資産」を凍結するため、宣言が出された。 ■非常事態宣言でトランプ氏の壁建設はかなうのか?  理論上は可能だ。軍当局は国家非常事態宣言によって、「軍隊の使用」を含む「国家安全保障に必要な」予算やリソースの振り分けなど、多くの権限を付与される。  トランプ氏は15日に国家非常事態を宣言したが、今後は軍当局に対し、壁を作るための緊急態勢を取り、資金と部隊を配置するよう指示する可能性がある。  だが、多くの専門家は、前述したように法廷や議会での闘争が予想されるため、非常事態宣言によって壁建設に至るとは考えていない。また、国民の反対に加え、軍当局もしくはトランプ氏の法律顧問団の側で指揮系統に何らかのコンプライアンス違反が出て、壁建設が実現しない可能性も指摘されている。 ■政治的な意味は?  米CNNが1月30日から2月2日にかけて行った調査で、「トランプ氏は壁建設のために非常事態宣言を発令すべきか」という問いに対し、「そう思う」と答えたのは31%、「そう思わない」と答えたのは66%で、米国民の大半は今回の宣言に反対していることが明らかになった。  国家非常事態宣言は特に、共和党に政治的な危機をもたらすように見える。国家非常事態宣言を撤回する決議の採決に追い込まれれば、潜在的に不人気な政策に結び付けられる恐れがある。一方、もしも壁建設を支持すれば、バラク・オバマ(Barack Obama)前政権時代に大統領令の乱用だとの批判を繰り返していた共和党自身が、憲法を順守していないと疑われる恐れがある。  だが、共和党にとって悪い事態になったとしても、上院の共和党トップ、ミッチ・マコネル(Mitch McConnell)院内総務は、再び政府が閉鎖された場合の政治的リスクよりも、国家非常事態宣言による政治的リスクの方が小さいと判断したようだ。トランプ氏は2回目の政府閉鎖を行う可能性もちらつかせているが、そうなれば政治的な大失敗だと捉える人が多い。【翻訳編集】AFPBB News 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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