追う阪神が巨人を倒すプランとは?
野球観についても同じことが言える。 昨年の話になるが、巨人の原監督は、阿部にバントをさせた。村田でも調子が悪ければ平気で外す。坂本も5試合結果が出ないと下位に下げた。勝つための非情。そしてチーム貢献、自己犠牲の精神をもってチームをまとめたいという指揮官の意志が強く出て、それが選手にも伝わった。巨人の打線は、ここ2年、そういうものを積み重ねてきた。原監督の目指している野球が明確なのだ。 一方の阪神はというと、その場、その場の場当たり的に見え、目指している野球が明確に見えない。ヤクルトにサヨナラ勝ちした16日のゲームが象徴的だった。1-1で迎えた9回裏に、先頭の西岡が内野安打で出ると、続く大和にはバントのサイン。結局、大和はバントに失敗して、フルカウントに追い込まれてから苦しまぎれのバスターエンドランを仕掛けた。それが三遊間を抜けて無死一、二塁となって、続く3番の鳥谷にはバントをさせた。おそらく鳥谷は、ネクストバッターズサークルで大和へのバントのサインを見た時に、「オレが決める」と決心して心と読みの準備していたはずだ。サヨナラの場面だからこそ確率の高い戦術で、1点を取りたいというベンチの気持ちはわかる。しかし、バントに失敗、運よく一、二塁になったから鳥谷にバントという場当たり的な采配では、選手の気持ちとベンチの思惑にズレが生まれていないのだろうか。 続くマートンと鳥谷の現状を見比べるならば、生え抜きの鳥谷で勝負をかけ、彼にリーダーの責任を植え付けるというプラスアルファを検討してもよかったのではないか。昨年原監督が、阿部に命じたバントとは意味が違う。巨人と1ゲーム、2ゲーム差という緊迫した展開であれば、勝ちに徹する野球でいいのかもしれないが、今の巨人とのゲーム差と残りゲーム数を考えると、和田監督は「こういう野球を目指して勝つ」という希望の色をハッキリと見せるべきだと思う。 来季への希望の持てる戦いにするためにも、今日27日からの巨人3連戦を含め残り7試合ある巨人との直接対決は重要になってくる。この直接対決の結果次第では逆転優勝の可能性もなくはない。そのためには、絶対的4番、絶対的エースの存在が不可欠になってくる。 対巨人の戦略は簡単ではないだろうが、私は、「4番・鳥谷」を提唱したい。 現在の4番のマートンは、14日の広島戦で退場となった。3回一死満塁でカウント0-1から外角への際どい投球をストライクとコールされ、その判定に執拗に文句を言ったのである。チームの4番がすべき行動ではない。外のボール球の見極めができていないバッターだから審判も、ああいう判定もするだろう。しかも、まだ三振したわけではないのだ。4番とはチームの責任を一身に担うポジションである。そのバッターが5点を追う満塁のチャンスに退場である。責任感が阿部と比べると雲泥の差である。