旦過市場 再整備を前に「店と客」つなぐ試み
FBS福岡放送
「北九州の台所」旦過市場は老朽化などに伴い、まもなく本格的な再整備が始まります。新型コロナの影響もあり客足が遠のく中、若手が中心となって店と客をつなぐ新たな取り組みに挑戦しています。 北九州市の旦過市場。昭和レトロの風情ある市場には100を超える店舗が軒を連ね肉や野菜、鯨肉まであらゆる食材が並びます。 この旦過市場の名物「ぬかみそ炊き」を販売する「百年床・宇佐美商店」3代目の代表、宇佐美雄介さん(38)です。 1950年ごろに創業した「宇佐美商店」では宇佐美さんの祖父母の代からぬかみそ炊きやぬか漬けなどを販売してきました。 ♪宇佐美雄介さん 「僕の祖母が嫁入り道具としてもってきたぬか床が100年以上たっていることから“百年床”と言っていて、そのぬか床をちゃんと絶やさないようにしなければいけない」 後継者がいないなか、宇佐美さんは5年前に脱サラしこの店を継ぎました。コロナ禍にあってもインターネット販売などでどうにかしのいでいます。 緊急事態宣言が解除された今月、市場には賑わいが少しずつ戻り始めていますが―。 ♪客は 「正月とか歩けないくらい人がいたけどそれがない」 ♪店は 「外国人も多かったのでだいぶ少なくなっている。元どおりとはまだ言えない」 そうしたなかで迎えるのが旦過市場の再整備です。戦後にアーケードを構えた旦過市場。当時から残っている店舗は築70年以上が経過しています。 そのため、市などは新たに複合商業施設を建設し、いま建ち並んでいる店舗をずらすことにしました。 ただ、期間は最短でも6年。コロナとも相まって市場からの客離れが懸念されています。 ♪宇佐美雄介さん 「再整備でお店の営業が普段通りできなくなるのに対してどうしようかなとずっと悩んでいた。コロナという別のかたちで全然お客さんが来ないという時期。考える時間をもらった。悪いことばかりではなかった」 それでも前へ… この状況を乗り越えようと宇佐美さんが手がけたのは「旦過直送便」です。旦過名物のぬかみそ炊きからボリューム満点の国産和牛まで。市場に来られなくてもその魅力を味わってもらいたいと、去年9月から7店舗が自慢の品を持ち寄ってネットでの販売を始めました。 ただ、ネット販売を始めるにあたっては市場ならではの課題も。新鮮で出来たてのものを対面で販売してきた旦過市場。そのためネット販売に適した保存が利く商品が少なく、保存用の冷凍庫などを持たない店も少なくありません。 その課題の解決に一役買ったのが天然の生本マグロを取り扱うこの店。同い年の店長、後藤聡志さん(38)です。 後藤さんが冷凍庫から取り出したのは「旦過直送便」の商品です。実はマグロのための冷凍庫を直送便の商品の保存用に貸し出しているのです。 冷凍保存の場所を確保したことで旦過自慢の商品を新鮮な状態で発送できるようになりました。若い世代が一丸となってこの困難を乗り越えようという思いは後藤さんも同じです。 ♪九州まぐろ旦過店 後藤聡志店長(38) 「(旦過直送便で)食べておいしかったので九州まぐろだけ買いに来たという客もいますし、ここにお客さんが集まれば周りの店が見られる。だから自分たち若い世代が頑張って発信して盛り上げていきましょう」 同世代の力を借りて実現した旦過直送便。宇佐美さんは今後参加する店舗を増やし、より市場一体となってこの状況に立ち向かっていきます。 ♪宇佐美雄介さん 「お客さんからの反応を直接なかなか会えないなかでそうしたメールや電話をもらう。再開発で客の来店が厳しくなると思うので旦過直送便で客とのつながりを保ち続けることができたら。落ち着いた時には旦過市場にぜひ遊びに来てもらえたら」 コロナ禍でまもなく始まる市場の再整備。アフターコロナ、そして再整備後を見据え、若い力で市場と客をつなぎ続けます。