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蓮沼執太「渋谷の環境音から社会を考える」リモート時代に考える合奏とは:インタビュー

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 蓮沼執太が率いる蓮沼執太フルフィルが8月26日にデジタル、10月28日にCD、LP『フルフォニー』をリリースする。蓮沼執太フルフィルは、蓮沼執太フィルとして活動していたメンバーに加え、公募オーディションにより選ばれた10名が加わった総勢26名による現代版ポップオーケストラ。収録曲全10曲中5曲が新録で、5曲がそのリミックスとなっている。「合奏」という意味が込められたアルバムタイトルはコロナ禍のなかで深い意味を感じさせるものだが、この新作はどの様に制作されたのだろうか。彼が自粛期間に着想した新プロジェクト『都市と合奏』についても含めて話を聞いた。【取材=小池直也】

状況が変わる時は、新しいものが生まれるチャンス

――コロナ禍の影響で音楽家は制限付きの活動が続いておりますが、蓮沼さんは現在どの様にされていますか。  ニューヨークでのソロ公演を終えた去年11月から日本に戻ってからはコロナの影響でずっと東京にいます。僕は普段から自宅スタジオにこもって作品を作って生きているようなタイプの作家なので、幸いなことに家で仕事ができています。予定されていたライブやフェス、主催公演、展覧会もすべてキャンセルや延期となりました。コロナだけじゃなく、いま世の中で様々な起こっており、その喧騒の中で粛々と作業をしています。 ――発つ前のアメリカの様子はいかがでしたか?  その時はニューヨークの報道だったり、友人もコロナの話は無かった気がします。情勢が半年もかからずにがらりと変わってしまいましたよね。「ブラック・ライブス・マター」のデモも想像を超える運動になり、先日は大型ハリケーンも来たみたいです。住んでいた家の近所にあるプロムナードの木が倒されている写真が友達から送られてきたりしました…。色々な観点からも安心出来ない日々が続いていますね。 ――近年、蓮沼さんは音楽的な「接触」について積極的に発言されてきました。そのなかで現在のソーシャルディスタンスに基づいたリモート演奏などについてはどう思われますか? 「接触」は、この2、3年コンセプトとして考えていたことのひとつです。音を原理的に考えると、風自体には音がなく、風が何かに当たることで音になりますよね。森の中では、葉と葉が擦れて、鳥の羽が身体に触れることで、それらが全体として音として現前しますよね。これらは直接的な接触ですが、それと同じく「映画を見て感動する」ということも何かしら自分に映像情報が視聴覚的に接触することで何かが生まれることもありますよね。5月に神奈川県立近代美術館 葉山で行う予定だった僕がキュレーションを行なったグループ展のタイトルも『フェイシズ|FACES』というものでした。まだまだ考えていくテーマです。  リモート演奏や配信ライブに関しては、今ある技術を使って、様々な分野から知恵を出し合って、映像とインターネットいう空間のなかで、音を合奏する試みはのは面白いですよね。一般的なライブという制度とは仕組みや経済的にも全然違うものだとは思いますし、大変だと思いますが僕たちは機会があれば、どんどんチャレンジしていきたいです。その試みは、状況が変わった時に新しいものが何か生まれるチャンスがあると良いですよね。コロナ禍でのSTAY HOME期にフィルのメンバーで直接会わずにレコーディングした「Imr」という曲があります。フィルのレコーディングの方法は、全員が集まって「せーの」で行う一発録音なんですけど、これは会わずに合奏しようということをコンセプトに作りました。メンバーにスコアとデモを送って、バラバラに録音して、それぞれの素材をまとめる試みでした。 ――では新作『フルフォニー』について教えてください。制作はいつ頃からされていましたか?  作曲していたのは2018年の春夏くらい。2017年の末にフルフィルのメンバーを公募しまして、たくさんのYouTube動画の応募からメンバー10人を選びました。草月ホールで行なった蓮沼執太フィル公演「東京ジャクスタ」で、フィルメンバーと初めての顔合わせでした。もともと理想的なミュージシャンや楽器が欲しいという理由での募集ではなく、年齢性別国籍などで区別をせずにどんな楽器でも参加したいと思ってくれた方がいいなと思っていました。  実際に宮坂遼太郎くんというパーカッションは、南米の留学先の部屋から「良い音のするクッションを見つけたので叩きます」という映像を送ってきてくれて(笑)。そういうアイデアやアプローチが面白いと思いましたし、常にオープンにして色々な人に参加してほしかったんです。音に対してどのように対峙しているか?それが一番大切な決め手でした。  ただ実際に集まってみると「大変だなあ、このメンバーの為の曲が作れるかな」となりました(笑)。大人数の一人ひとりと向き合って信頼感を作ることも難しいですし、簡単には築き上げれません。最終的には結局は公開リハーサルで音を出したりして、何とか初演のライブに向けて形になってきたという感じです。

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