『カムカムエヴリバディ』浜辺の青春群像劇が展開 るい、ジョー、ベリーの恋模様
その海の鮮やかなブルーは、4人の男女の行き交う想いや爽やかな青春を表すような色だった。『カムカムエヴリバディ』第51話では、トミー(早乙女太一)の策略でダブルデートをすることになった、るい(深津絵里)、ジョー(オダギリジョー)、ベリー(市川実日子)の恋愛模様が中心に描かれる。 【画像】浜辺に並んで立つるい(深津絵里)とジョー(オダギリジョー) とにかく、ジョーとるいの距離感が微笑ましくて仕方ない。夏祭り頃からなんとなく近づいた2人。この、気がつけばジリジリ近づいてくる感じはオダギリジョーがこれまで演じてきた役柄にも共通するというか、彼だからこそ醸し出せる雰囲気ではないだろうか。彼に関しては日に日にるいに惹かれていることがわかりやすく、小学生に「アベック」と言われてもニヤニヤするだけで反論しないし、海に向かって「サニーサイド」を口ずさむ彼女に向ける眼差しは、もはや隠しきれない気持ちで溢れている。 それでもまだ、人ひとり分の間をあけて隣に立つ彼らは、海を見ながら「船でアメリカまでいった人がいるらしい」「あ、知ってる知ってる」くらいの、他愛もない世間話をする。そして、そのトーンを保ったままで「お母さんの顔が浮かぶ?」と、切り出すジョーに「大月さんこそ、ルイ・アームストロングの吹くトランペットの音が聞こえている?」と、小粋に返するい。そんな彼女だから、「いつか、アメリカの空の下で『On the Sunny Side of the the Street』を吹きたい」というジョーの本音を引き出せたのだろう。 戦災孤児のジョーは、小さい頃からトランペットだけが友達のため、それで優劣をつけるのも、負けるのも怖い。なのでコンテストへの参加を渋っていたが、本当は彼もアメリカという地に思いを馳せていたことがわかった。るいもまた、アメリカに行った母を想う。二人とも、向かい合っているんじゃなくて、同じ方向を横並びに向いているという浜辺のショットは、まさにトミーの言う“共鳴”を表すものだ。 そう、トミー。彼こそ今話のMVPといっても過言ではない。自分の思惑通りにジョーの気持ちを変えるため、るいに彼のことを話すシーンでは、トミーというキャラクターを深く理解した早乙女太一の細かい所作が非常に印象的だった。話すときの間や、目配せ。自分が話していない時も含め、すごく繊細な表情の動かし方でトミーを演じる早乙女には脱帽である。そして、トミー自身にも脱帽だ。先日から名言メーカーのように、くさいけどかっこいいセリフばかりを連発する。そうしてベリーに二人の“セッション”を見せることで暗に諦めさせようとさせる彼。しかし、ベリーは彼にこう言った。 「言うとくけど、私は負け犬やあらへん。ジョーが世界に認められるトランペッターになったら、私の勝ちや」 今日の放送で何度「く~かっけえ!」と突っ込んだかわからないが、その言葉はまさに、推し活の鑑そのものだった。 演じる市川は、公式インタビューコメントにてベリーがジョーに抱く感情を「ファンなのかな、それとも恋心なのかなと。紙一重ですよね、そういう思いって。でも、今は熱烈なファンなんだろうなと思っています。ファンであることを、自分では恋だと思っているのかなと……」と語っていた。 たとえ推しと自分が結ばれなくても、推しは一生推し。恋なのか、愛なのか、憧れなのか。その感情そのものは曖昧なものだ。しかし、それを抱き続ける自分の意思は、明瞭。その選択の強さに、ベリーの魅力が深まる。彼女も間違いなく今日のMVPだ。いや、みんなMVP。 「ベリー、僕と共鳴せえへんか?」 るいとジョーが「サニーサイド」を一緒に歌うという、微笑まして可愛いやりとりの裏では、まるで対比するかのようにトミーとベリーの小粋で大人な応酬が続く。「私をハントしようなんて、100万年はやいわ」と、口説かれてもなびかず、車を走らせるベリー。く~! かっけえ! トミーもベリーも一見嫌なやつに見えたキャラだが、その真価がしっかりと描かれた第51話であった。 そして、どうやって帰ってきたのかわからないジョーとるい。彼はコンテストで優勝したら一緒に東京に来てほしい、とるいに頼む。「たとえ誰かと結ばれなくても、私の道を行く」というベリーの意思表明と再び対比されるかのように、「俺についてきてほしい」と言われるるい。放送の冒頭で、短いながらに絶大なインパクトと笑いを残した竹村夫妻と離れて暮らすことになってしまうのだろうか。あの漫才のようなやりとりが見れなくなってしまうのは少し寂しい。果たして、るいの選択はいかに。
アナイス(ANAIS)