「維新市府政に異議あり」と提訴 大阪市立高校21校の府移管 なぜ無償譲渡?(2)しわ寄せは生徒に
明日1月28日、大阪地裁で注目の裁判が結審する。維新の市・府政が大阪市立の高校21校を廃止し大阪府に無償譲渡しようとしているのは違法だとして市民が訴えている。土地・建物だけで計1500億円という巨額な市民の財産。犠牲になるのは生徒たちだという危惧の声が上がっている。(新聞うずみ火 栗原佳子) 【写真特集】「大阪市廃止」どうなる? 賛否訴える動きが活発化
◆特別支援学校は府移管で教育条件低下
市立高校の府移管で、教育現場には何が起きるのか。先行例がある。16年、大阪市立の12校が廃止、府に移管された特別支援学校だ。学校教育法上、支援学校の設置義務は都道府県に課されるが、大阪には大阪市と堺市にも市立支援学校があり、居住地などで棲み分けられていた。しかし14年、当時の松井知事と橋下市長が「支援学校の運営については広域自治体である府に一元化」することで合意。 大阪市立だけが「二重行政」だとして、大阪市廃止を前提に府へ移管された。 大阪市の障害児教育は全国でも先進的な役割を果たしてきた。市立盲学校は国内で京都盲学校に次いで整備。市立聾学校も全国に先駆け手話教育を展開してきた。 父母や教職員は移管によって、手厚い市の独自事業が切り捨てられ教育条件が低下すると反対した。しかし、市教委も府教委も「教育条件は後退させない」の一点張りだった。 父母らの不安は的中した。移管後2年は緩和措置が取られたが、その後は府のルールを適用。教材費の予算は半減し、図書室の本の年間購入費も50万円から9万円に。肢体不自由の子どもたちの学校に市が独自予算で8~11人配置していた「実習教員」は府の基準にあわせ2人までに減らされた。 府は財政が厳しく、教室不足解消も一層遅れると懸念されていた。いま喫緊の課題は知的障害支援学校の過密化。26年には児童生徒が1590人増えると推計されるが、学校増設で対応できるのは600人程度。 府立障害児学校教職員組合書記長の西面(にしお)友史さんは 「とにかく府は、お金がかかることは潰していくという姿勢。教育条件が低下したのは現場の実感です」 と嘆く。