競輪学校落第にデビュー目前での大ケガ「やっぱり選手になれないんじゃ…」2世ガールズレーサー苦悩と努力の軌跡/鈴木彩夏インタビュー前編
日々熱き戦いを繰り広げているガールズケイリンの選手たち。今回は引退した元競輪選手・康雄さんを父に持つ“2世レーサー”鈴木彩夏選手(29歳・東京=110期)にインタビューを行った。前編では、競輪学校での落第やデビュー直前に大ケガを負うなど一筋縄ではいかなかったデビューまでの紆余曲折の軌跡を振り返ってもらいました。
競輪選手の父ゆずりの運動神経
千葉県松戸市出身の鈴木彩夏。父は競輪選手の鈴木康雄(53期・引退)だ。小さいころから運動神経が良く、何をやっても器用にこなしたそうだ。 高校はスポーツの強豪校・市立松戸高校を志望したが、偏差値が足らず猛勉強に励んだ。念願の第一志望へ入学した高校1年の春、いろんな部活動を見学して、女子サッカー部への入部を決めた。 「2011年、女子サッカーのワールドカップでなでしこジャパンが優勝しましたよね。自分も女子サッカーを見ていて、やってみたいと思いました。高校3年間は部活に熱中。自由な雰囲気だったので楽しくできました」 部活に打ち込む一方で、高校卒業後の進路は悩んでいた。 「小さいころからこれと言ってやりたいことはなくて…。進路相談では一応美容系の仕事を希望して、説明会も行ったけど…」
父の勧めで自転車競技に挑戦、児玉碧衣と出会う
すると、そんな彼女を心配した父が「ガールズケイリンはどう?」と声をかけてきたという。 「ガールズケイリンが始まったことは知っていました。でも自転車の経験はないし、最初は選択肢になかった。そうしたら父が『選手になったら勉強しなくていいよ』って言うんです(笑)。部活は4月で引退だったので、5月に自転車を組んでもらい、父と松戸競輪場で一緒に練習をしていました」 最初は流れのままに競輪学校受験へ動き出した鈴木だったが、高校3年生の夏に行った自転車競技が体験できる女性限定キャンプ『ガールズサマーキャンプ』で気持ちにスイッチが入る。そこでは同じ目標に向かう仲間との出会いが待っていた。 「一番最初に仲良くなったのは(児玉)碧衣ちゃんでした。いきなり『クリップバンドって何?』って声を掛けられてビックリした。同じグループには(引退した東口)純さんもいて、ガールズサマーキャンプ中は一緒にいましたね。キャンプの終わりにグループLINEを作って『これから試験に向けて頑張っていこうね』って話して別れた。みんなで一緒に競輪学校に入りたいって気持ちになりました」 決意を固めてからは練習に打ち込んだ。当時現役だった父と一緒に朝5時に競輪場へ行き練習。昼間は高校に行き、夕方はまた競輪場に戻って練習という日々を重ねた。