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悪役の“顔芸合戦”と平常運転の「堺雅人」 人気作だけに気になる「女不在」

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デイリー新潮

 ネットニュースもSNSも「半沢直樹」祭り開催中。普段ドラマを観ない人も引きずりこんで、大きなうねりとなっている(気がする)。歌舞伎役者と舞台出身俳優(新感線に第三舞台、つかこうへいに東京乾電池、超豪華よ)の外連味(けれんみ)&顔芸合戦、前作からの濃厚キャラの踏襲、交渉・契約・裏取引にはデッドラインを設けてテンポよく臨場感たっぷり。7年前の熱と圧が一気に蘇った、そんな印象だ。

 私はとにもかくにも堺雅人が観たかった。この7年の間、「リーガルハイ」「Dr.倫太郎」「真田丸」と名作に出演してはいたが、もうちょい頻度を上げてほしかった。この役は堺がやればいいのにと思う作品も多々あった。ま、駄作に出まくるよりは選んだほうが正解。しかもCMも集中して、一気に露出。ソフトバンクにマクドナルドにサントリー。うまいな! 働き方が。  顔の圧力全開の役者陣の中で、平常運転を維持しつつも、抜かりなく倍返しの見せ場を作る。家にいるときのみ、表情筋を緩ませてモード変更。さすがだと思う。思うが、第1部はとにかく市川さんちが大活躍。亀……じゃなくて猿之助と中車、というか香川照之のいとこタッグが強烈すぎて、SNSの話題は完全にヒールがかっさらう構図に。

 もうね、香川演じる大和田暁に関しては、みんな愛おしさを感じていたよ。大和田劇場、俺たちのアキラだった。キムタクドラマ「A LIFE」の浅野忠信演じる壇上壮大(ダンジョウマサオ)を思い出した。俺たちのマサオは矮小さに哀愁があって愛おしかったっけ。  可愛がっていたつもりの部下に裏切られて辛酸&悔し涙アゲイン、宿敵半沢に助け舟を出される情けなさ。役員会議で半沢の告発に便乗し、浮かれてほくそ笑み、それでもまだ半沢に嫌がらせを続けて、上を目指す阿漕(あこぎ)さ。もはや主役にとっての脅威には見えず、守ってあげたい愛おしい存在に。  最も気の毒だったのは山崎銀之丞。契約直前に半沢に悪事を暴かれ大失態。成功報酬制なので手取りゼロ。焦りと脂汗と落胆が見事。  ただ、女不在はものすごく気になる。いや、いるけど、男の理想像しかいないわけよ。仕事中心の夫に可愛くぶーたれながらも、手料理作って優しく支える妻(上戸彩)、忠実で小回りの利く部下(今田美桜)、ビジネストーク完璧で、情報ツウの美人女将(井川遥)、妙に色気があってニンフォマニアっぽく描かれた悪役の副社長(南野陽子)。海外ドラマではありえないほどのジェンダーギャップ。「これはビジネスドラマだから当然」と思った人、アウト。女性が主体性に乏しく、男性に都合のいい存在でしかない。排除に近い。これが日本ドラマのスタンダードになるとしたら、いよいよヤバイ。日本のドラマのガラパゴス化。違和感を覚えないほうがおかしい。話題作で超人気作だからこそ、そこはぜひ進化してほしい。  第2部は国家権力と戦うらしく、さらに盛り上がりそうな気配。今の政治不信とも重なり、最終回は再び伝説の高視聴率となるかも。意外と楽しみDEATH!!  吉田潮(よしだ・うしお) テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。 「週刊新潮」2020年8月27日号 掲載

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