「最量販モデルを壊せ!」なぜ豊田章男社長は“攻めること”を指示した? レクサス「RX」開発の舞台裏
最量販モデルのRXでも「守るな、壊せ」
先ごろレクサスは、新型「RX」を初披露しました。発売スタートは2022年秋の予定です。 【画像】紆余曲折を経て“らしさ”を獲得したレクサス新型「RX」を写真で見る(30枚) しかし、そんな晴れやかな舞台に立ったチーフエンジニア・大野貴明さんの表情はやや硬く、緊張しているのがこちらにも伝わってきました。
新型RXの企画初期段階において、クルマの方向性を説明しにいった大野さんは、レクサスのマスタードライバーでもある豊田章男社長から次のように声をかけられたといいます。 「RXはレクサスのグローバル・コアモデルだから、開発は大変だよね。けれど守りに入らず、RXを壊して欲しいんだ」 RXはレクサスの最量販モデル。屋台骨を支える重要な車種だけに失敗は許されません。しかし豊田社長はあえて「守りに入るな」とクギをさしたのです。 「その言葉にハッと気づかされました。やはり同じところにとどまっていてはダメだ、一段も二段も上へいかなければ、と。その結果、“変革に挑戦する”という新型RXの商品企画の軸が出来上がりました」(大野さん) ●テクニカルセンター下山での“走りの味みがき活動” こうして素性のいいクルマづくり、レクサスならではの対話ができる、走って楽しいクルマづくりを推進することになった新型RX。そのベースとなっているのが、レクサスの開発陣が地道に続けている“走りの味みがき活動”です。 かつてアメリカのメディアは、レクサスを「よくできているが、退屈なクルマだ」と評価しました。それを受けた豊田社長は「レクサスは、見ても乗ってもエモーショナルな存在へと変わらなければ」と一念発起。2017年に発売がスタートした「LC」以降の各モデルは、テクノロジーや走りのチューニングなどが格段にレベルアップし、レクサスならではの走り味をアピールできるまでになりました。 そうしたなかでスタートしていたのが、走りの味みがき活動です。すべてのレクサス車のチーフエンジニアや評価ドライバー、デザイナーたちが、開発拠点である新しいテストコース・テクニカルセンター下山に集結。この“下山合宿”で開発中のモデルを乗り比べながら、課題をクリアするとともに、レクサスの味とはなにかを横串で共有していくという手弁当の活動です。