青学大の箱根連覇は濃厚か。選手層は厚くカギとなるのは2区と5区
悩ましいのが2区を担う人材だ。エースの吉田、全日本7区で区間賞を獲得した主将の神林勇太(4年)も上りが得意ではない。15km付近の権太坂と、最後の3kmに厳しい上りが待ち構えているエース区間での"真っ向勝負"は避けてくるはずだ。2人はともに、箱根駅伝は2区を逆行する9区で区間賞を獲得している。 2区は別の候補を立てて、1区と3区でアドバンテージを奪う作戦を立ててくるだろう。高速レースに対応すべく、吉田を2年連続の1区、神林を3区に配置する作戦が有力か。前々回も、2区を予定していた森田歩希(現・GMOアスリーツ)が故障の影響で3区に回った。「つなぎ」と考えた2区を梶谷瑠哉(現・SUBARU)が区間10位で乗り切ると、3区の森田が区間新の快走で8位から一気にトップに立った。原監督は今回も同じパターンを思い描いているのではないだろうか。 2区に起用される可能性があるのは、全日本3区を区間3位と好走した中村唯翔(2年)、全日本5区で区間新の区間賞を獲得した佐藤一世(1年)あたりか。12月14日に行なわれた「メディア向けオンライン会見」では、希望区間についての質問に「2区」と答えた選手はいなかった。なお中村は10区、佐藤は1区を希望区間に挙げていたが、誰が花の2区に抜擢されるのか。 オンライン開催となった12月10日の箱根駅伝監督トークバトルでは、「往路のどこでトップに立ちたいか?」という質問に対して、原監督は「やっぱり山(5区)です。4区までは大混戦でいくでしょう。山決戦でバラけてきます。山は走力だけでなくメンタリティも重要です。抜かれるとエネルギーを吸い取られますが、逆に抜くとパワーをもらって上っていける。走力だけでなくメンタルをポイントに置いています」と答えている。
5区の候補は、前回区間2位の飯田貴之(3年)と、過去2回の5区(区間5位、同13位)を経験している"実質5年生(箱根駅伝のために留年)"の竹石尚人(4年)だ。原監督は区間記録(1時間10分25秒)前後となる「1時間 10分台」を想定。山下りの6区も6年連続して区間3位以内と安定しているため、山を大きく外す不安は少ない。なお6区は近藤幸太郎、中倉啓敦、横田俊吾、脇田幸太朗の2年生4人が希望区間に挙げている。 竹石を5区に起用できれば、飯田や、前回8区2位の岩見秀哉(4年)を4区や復路にまわすことができる。ライバル校としては嫌なオーダーになるはずだ。原監督は、「大混戦となる今回は往路から積極的なレース展開をしていきたい」と話しており、総合優勝のために往路Vを目指していく考えだ。1、3、4区は区間賞争いができる人材を配置できるだけに、2区と5区の走りがカギになってくる。 「4年生、特に神林、吉田、竹石には絶大な信頼を持っているので、この3人が有終の美を飾ってくれると確信しています」と原監督。今回の箱根がラストランとなる神林、全日本8区で逆転を許した吉田、前々回の箱根でブレーキとなった竹石。最後の箱根に熱い思いを持つ3人の起用が有力視される往路をトップで折り返すことができれば、連覇は濃厚と考えていいだろう。
酒井政人●文 text by Sakai Masato