城氏が語るW杯アジア2次予選。なぜ森保ジャパンは格下のタジキスタン攻略に手ごずったのか?
敵地でのW杯アジア予選では起こり得ることではあったが、森保ジャパンは、FIFAランキング115位のチーム攻略に手こずった。サポーターの後押しを受けてのタジキスタンの頑張りもあったが、前半は0-0のスコア。その理由は、日本のスタメンの人選、シフトにあった。 森保監督は、鎌田をワントップに置き、2列目に中島、南野、堂安と並べた。だが、所属するアイントラハト・フランクフルトでは、2列目が本職の鎌田が、かなり下がってプレーするケースが目立った。南野と並ぶような形になってしまいワントップとして機能しなかった。さらに中島もコンディションが悪かったのか、ボールが収まらず、タジキスタンの激しいプレスも手伝って、ボールをキープできず攻撃がチグハグになってしまった。 そこが前半苦戦の要因。 加えて決定的な場面を作りながらもシュートの精度が悪く決めきれなかったことでリズムに乗れなかった。タジキスタンはクロスボールを見失う傾向があって、コーナーキックからも、チャンスが何度も生まれた。 だが、吉田は、2度、マークを外してフリーになりながらもシュートを外したし、後で詳しく説明するが、南野もノーマークの状態を作っておきながら、中島のクロスに合わせたヘッドがキーパーの正面をついた。得点すべきところで得点できなかったこともズルズルと前半に嫌なムードが漂った原因の一つだろう。 決定機を逃すことでリズムを作れないという現象は、6-0で圧勝した前節のモンゴル戦でも見受けられた。今後、アジア最終予選に入り、相手のレベルが変わってくると、致命的にもなりかねない課題。今の段階から、もっとシビアに突き詰めていかねばならない問題だろう。
しかし、後半、森保監督は、ポジション変更を指示した。南野をワントップに置き、鎌田を慣れているトップ下に下げた。そのことで、南野と鎌田の縦の関係が機能し始めて、中盤で柴崎もボールをコントロールすることが可能になった。 後半8分に中島のクロスに南野がヘッドで合わせて均衡をやぶり、3分後には、柴崎が冷静に、右サイドの酒井へボールを送り、酒井がグラウンダーの強いクロスをゴール前へ入れて、そこに走り込んできた南野が右足を絶妙に合わせて2点目を流し込んだ。タイミング的には、少し遅れたボールだったが、南野がうまく対応した。南野は、元々、こういう技術のある選手であるが、柔軟なポジション変更が危機脱出へと直結したのである。 大迫が故障で招集外になったことで、森保監督は、モンゴル戦では永井、タジキスタン戦では鎌田をワントップに置いた。テストケースだったのだろうが、決して機能したとは言えなかった。現状の戦力では南野のワントップがベストの布陣ではないだろうか。 その南野は、W杯予選で初戦から3試合連続ゴールを果たした。三浦知良選手の記録に26年ぶりに並ぶ快挙である。なぜ南野はゴールを量産できているのか。 私は、ゴールへの強い意識が、一番の理由だと見ている。海外ではゴールという結果を出さねば生き残れない。それはイコールゴールへの執着であり、エゴイストにならねば、明日はないのである。そこで南野の意識がガラっと変わった。ペナルティエリアに入り、ゴール前に顔を出す確率が非常に高くなった。そういう選手には必然的にボールが集まってくる。 そして南野の相手のマークを外す技術の高さがある。クロスボールが上がると相手のディフェンスは、ボールとマークの両方を見ながら動く。南野の駆け引きを見ていると、相手がボールを見た一瞬を狙って動きだしている。また、中島も、そのタイミングに合わせて絶妙のクロスを上げてきた。マークを外せているのだから、あとは決めるだけ。それが均衡を破った先制のヘッドである。 だが、その一方で南野は、どうもヘディングが得意ではないようにも見える。