〈コンテナの良さを理解していない日本の物流〉断絶する国際貨物輸送と国内貨物輸送の実態
“箱”のメリットが発揮されない日本の貨物運送
上述の通り、日本では欧米や一部のアジアの国々とは異なり、トレーラー輸送の利用頻度は極めて低い。たとえトレーラー輸送が利用された場合であっても、“箱”としてのメリットはほとんど発揮されていないため、ドライバーは手待ち時間からも荷役時間からも解放されていないのである。 そのような状況に加えて、23年10月5日「国土の狭い日本もトレーラーで物流問題解決可能な理由」で述べた「工場・倉庫の地域」に住宅が混在する日本の状況も影響して、表2が示す通り、日本のトラック保有車両数におけるトレーラーの分担率は3%前後と、ほとんど普及していないというのが実態なのである。
積み替え前提のコンテナ・ドレージ
最後にもう一度、日本発着の国際海上コンテナの日本国内輸送の状況を、視点をやや変えて見ていきたい。 図2は、日本発着の国際海上コンテナの日本国内輸送の状況を輸送モード別輸送量構成比で港湾地域別に示したものである。 ご覧の通り、輸出においては、阪神港を除いて90%以上がオンシャーシ・コンテナをヘッドで輸送する。海運業界ではコンテナ・ドレージ輸送と呼ばれるトレーラー輸送である。 阪神港では四国からのはしけ・船舶・フェリー輸送が比較的盛んに行われているために10%超のシェアとなっているが、それでもコンテナ・ドレージが85%超のシェアとなっており、圧倒的シェアであることに変わりはない。特に中京港(名古屋・四日市)におけるコンテナ・ドレージ輸送は99%近いシェアとなっている。一方、(鉄道)貨車による輸送量のシェアは、どの港湾地域においてもほぼ0%というのが実情である。 輸入においては、全ての港湾地域でコンテナ・ドレージ輸送が90%以上のシェアとなっており、やはり中京港の98%近いシェアが目立っている。はしけ・船舶・フェリーのシェアは1%前後、(鉄道)貨車のシェアは1%未満である。 しかしこのように大きなシェアを占めるコンテナ・ドレージ輸送の多くは、荷主の工場や物流センターに直結してはおらず、先述の通り、国際海上コンテナとトラック、鉄道コンテナ、はしけ・船舶・フェリー等国内輸送モードとの積み替えのための、コンテナターミナルと港湾後背地の物流事業者施設との間の短距離輸送なのである。 二つ以上の輸送モードを利用したコンテナの詰め替え無しのインタクト輸送は、国際的にインターモーダル輸送と呼ばれているが、上述の通り国際輸送と国内輸送が断絶している日本発着の国際海上コンテナ輸送は、グローバルな視点ではインターモーダル輸送とは言えないであろう。 そのような認識を念頭に、次回は日本におけるモーダルシフトと鉄道コンテナ輸送に戻って、その選択肢を探ってみることとしたい。
田阪幹雄