内閣府「子どもの貧困」調査、教育格差の深刻実態 龍谷大・松岡亮二、データで継続把握する意義
「子どもの貧困」と教育格差
内閣府が子どもの貧困に関する全国調査を2021年に行った。昨年末に公開された「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書」(以下、内閣府調査)は、貧困線未満(等価世帯収入が中央値の2分の1未満)の世帯の保護者と子どもが直面するさまざまな困難を明らかにしている。今回は、教育社会学者で『教育格差』(ちくま新書)の著者として教育格差の実態を数々のデータを用いて検証してきた龍谷大学社会学部 准教授の松岡亮二氏に、内閣府調査を読み解くポイントについて教えてもらった。 この調査をグラフで見る まず、言葉の定義を確認しておきたい。子ども本人に変更できない初期条件である出身家庭の社会経済的地位(Socio-economic Status、以下SES)などの「生まれ」によって学力や最終学歴などの教育成果に差がある傾向を「教育格差」と呼ぶ。 SESは社会的、経済的、文化的な特徴を包含する複合的・多面的な概念で、多くの社会科学研究では保護者(以下、親)の職業、世帯収入、両親の学歴や文化的行為などを統合した1つの指標を作成し分析に用いている。一方、「貧困」は通常、世帯収入だけで定義される。概して、相対的な貧困家庭出身であると、非貧困家庭と比べて学力や進学などの教育達成は低位にとどまる。 SESは複合的・多面的な概念で、貧困は経済的側面である世帯収入だけで把握するわけだが、相対的な貧困層はSESが低い層と実質的に大きく重なっている。大まかな傾向として、高収入世帯の親は高学歴でホワイトカラー職に就いている。このような傾向の一部は内閣府調査でも見られており、例えば、親の学歴と等価世帯収入には明確な関連がある。 換言すれば、世帯収入が低い貧困層は、職業や学歴といった社会的・文化的な観点でも不利で、有形無形の資源を持たない傾向にある。総じて、「生まれ」によって結果に差のある「教育格差」社会の中で最も恵まれない条件にあるのが「子どもの貧困」層といえる。