東京メトロの成長加速、カギは「私鉄連携」なのか? 上場後に広がる収益多角化を考える
駅直結開発で安定収益の確保
現在、東京メトログループの不動産事業の営業収益は流通・広告事業に比べて少ないが、それだけ収益拡大の余地があることも意味している。東京メトロは、「一部の福利厚生施設を除いて、保有する不動産の大半は都区内にあり、主に賃貸物件」と説明し、さらに 「駅・まち一体型の開発による価値向上を目指して、駅直結型の不動産開発を図ることができるのが、他社にはない当社の不動産開発の強み」 と強調している。また、「駅直結、駅至近案件は稼働率、賃料水準も下がりにくいという安定性も強みである」とも説明している(同社広報部)。 確かに、現状維持プラスアルファで満足するならリスクを取る必要はないかもしれない。しかし、東京メトロ沿線の開発だけでは、新たに住民が転入してもその乗車距離はあまり伸びず、通勤や通学で割引率が高い定期券を利用する人が多いため、客単価の伸びは期待しにくいだろう。 企業価値をさらに高めるためには、私鉄と戦略的提携を結び、私鉄やJRの沿線開発に参画することが有望だと考えられる。これにより、 ・不動産事業の利益 ・東京メトロ線の利用促進 が同時に進み、客単価の向上にもつながるはずだ。例えば、東武伊勢崎線沿線での不動産開発を行うことで、春日部駅などからの東京メトロ日比谷線直通の有料座席列車「THライナー」の利用が増え、東京メトロの収益と客単価の向上が期待できる。東武鉄道にとっても収入増となり、東京メトロの資金力を活用して大規模な沿線開発が可能になる。 東武鉄道にTHライナーに関する新たな施策について問い合わせたところ、 「現時点で回答できる新たな施策はないが、ご利用しやすい運行形態を引き続き検討する」 との回答を得た。また、東京メトロとの協業については、「両社にとってより良い成果を生み出せる協力体制の構築に向けて、引き続き関係を強化していく」と述べている(同広報部)。