Eー1、Uー22代表発表も明確メッセージの見えない顔ぶれ…東京五輪強化はこれで大丈夫なのか?
各国リーグがちょうどクリスマスのオフに入る時期で、日本へ帰国してくる選手も少なくない。しかし、JFAからレターが届けばジャマイカ戦へも参戦するのか、とコロンビア戦を終えた久保に尋ねてみると、困惑した表情を浮かべながらこんな言葉が返ってきている。 「今回も(日本)協会とクラブが話し合った上での招集だったと思うので。自分のチームの(年末年始の)スケジュールもわからないですし、自分ではちょっとどうしようもできないですね」 招集するにはJFAと各クラブの個別交渉次第となる。コロンビア戦は各国リーグが中断する国際Aマッチデー期間中の開催だったこともあり、総勢8人のヨーロッパ組を呼び寄せることができた。一転してジャマイカ戦の陣容は、中山や前田に加えてMF安部裕葵(FCバルセロナ)らを招集できたものの、他の個別交渉が軒並み不調に終わったことを物語っている。 来年からはU-23代表となるチームは来年1月にタイで開催される、東京五輪アジア最終予選を兼ねたAFC・U-23選手権に臨む。開催国として出場権を得ている日本は、貴重な真剣勝負を経験できる舞台としてベストメンバーで臨む方針を固めているが、シーズンの後半戦が再開されたヨーロッパ組を招集できる可能性は極めて低い。 「国内外を問わずに、すべての選手を招集の対象とさせていただければと思っているが、現実的にはヨーロッパでプレーしている選手たちの招集は難しく、簡単ではない。それでも、その時々の条件のなかでベストの活動をすることが、我々の最終的な成果につながると思っています」
チームの最終目的地となる東京五輪を、森保監督は努めて冷静沈着に見すえた。ただ、前回のリオ五輪でも、当時所属していたヤングボーイズが方針を翻意させたことで、FW久保裕也が出場辞退を余儀なくされている。開催国として交渉しやすいとはいえ、東京五輪本番でもヨーロッパ組を招集できる保証はない。 会見に同席したJFAの関塚隆技術委員長は、交渉の進捗状況をこう語るにとどめた。 「東京五輪へ向けた経過報告はできない。最後のところで(各クラブから)イエスと言ってもらえるように、現場がほしいという選手を呼べるように、我々としても継続して粘り強く努力していきたい」 来年のカレンダーを見れば、東京五輪世代のヨーロッパ組をU-23代表として招集できるのは、東京五輪直前を除けば、おそらくは3月と6月の国際Aマッチデーしかないだろう。しかし、両方ともフル代表が臨むカタールワールドカップ・アジア2次予選の4試合ですべて埋まっている。 2つのカテゴリーの代表監督を兼任していくには、物理的に限界があるのではないか。こうした疑問を、JFAの田嶋幸三会長は11月の段階で「まったく筋が違う」と否定している。 「2つのチームを見る難しさというよりも、何人かの選手を融合させることの難しさは感じました。それでも、単純に監督が違うから上手くいくとか、いかないとかの問題ではないと思います」 融合の点でもコロンビア戦で初めてU-22代表としてプレーした堂安が、フル代表の[4-2-3-1]が東京五輪世代では[3-4-2-1]がメインとなっている点に、少なからず戸惑いを覚えていた。システムの統一を含めた、さまざまなジレンマを抱えながら森保監督は8日に韓国・釜山入り。E-1選手権を戦い終えると24日からは生まれ故郷の長崎でU-22代表合宿に入る、慌ただしい年末へと臨む。 (文責・藤江直人/スポーツライター)