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NHK原爆企画ツイートが炎上 問題の本質は

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週刊金曜日

「もし75年前にSNSがあったら?」「2020年の広島に暮らすメンバーが、当時の生活をじっくり想像し、自分たちの言葉でつぶやきます」という設定でNHK広島放送局が若い世代向けにツイッターで発信している「1945ひろしまタイムライン(以下「タイムライン」)」が問題となっている。  この「タイムライン」は、実在の3人の日記をもとに、架空の広島市民3人のアカウントがツイートを発信。フォロワーは合計で40万を超す。しかし、アカウントの一つ「シュン@ひろしまタイムライン」が8月20日に発した複数のツイートに対し、急速に批判の声が広がった。 〈朝鮮人だ!! 大阪駅で戦勝国となった朝鮮人の群衆が、列車に乗り込んでくる!〉〈「俺たちは戦勝国民だ!敗戦国は出て行け!」圧倒的な威力と迫力。怒鳴りながら超満員の列車の窓という窓を叩き割っていく そして、なんと座っていた先客を放り出し、割れた窓から仲間の全員がなだれ込んできた!〉 「シュン」は6月16日にも〈朝鮮人の奴らは「この戦争はすぐに終わるヨ」「日本は負けるヨ」と平気で言い放つ。 思わずかっとなり、怒りに任せて言い返そうとしたが、多勢に無勢。 しかも相手が朝鮮人では返す言葉が見つからない。奥歯を噛みしめた〉などのツイートを複数発信していた。  いったい、このような差別感情に満ちたツイートは、どのようなプロセスで作成されたのか。  NHK広島放送局によると、「シュン」アカウントは当時13歳の入市被爆者(原爆投下後に広島市内に入り被爆)新井俊一郎氏の手記、および新井氏からの聞き取りをもとに3人の10代の若者が作成、劇作家の柳沼昭徳氏の監修のもとに発信しているもの。  現在88歳の新井氏は、戦後は地元の中国放送で報道部長などを歴任、また被爆体験の証言活動も行なってきた。自らが13歳当時に染まっていた朝鮮人蔑視を反省しつつ、当時の心情を伝えたいという意図で証言した可能性もある。  しかし、NHKが2020年の今、それをそのままツイッターで発信することは適切なのか。 【日本の「戦争記憶継承」の基本姿勢が問われている】  SNS上ではさまざまな批判が提示されている。〈当時の日本社会全体がレイシズムに満ちていたという注釈を付けずに発信したら、ただの差別煽動ツイートになる〉〈『実感』させる内容が『朝鮮人の乱暴狼藉が許せない』だったら差別主義者の大量生産になるだけ〉〈差別煽動の問題で重要なのは意図ではなく『効果』だ〉  批判を受けてNHKは24日に「タイムライン」HPに(新井氏が)「当時に抱いた思いを現在も持っているかのような誤解」を生んだこと、ツイート作成者などに迷惑をかけたことをお詫びし、今後「必要に応じて注釈をつける、出典を明らかにする」と表明した。だが当該ツイートは削除されず、注釈は加えられず、差別煽動効果を持つツイートを発信したことへの謝罪もない。本誌の取材に対し、NHK広島放送局広報は「差別煽動効果を生んだか否かは現時点では答えられない」と述べた。  在日4世のライター秋原京氏はツイッターで次のように指摘している。〈『注釈』が必要だったというような小さな言い方だけに矮小化させるのもよくないし、NHKはそう逃げたがるだろう〉〈僕たち在日はずっと原爆や空襲による犠牲者たちを悼みながらも、なぜ日本のメディアは被害感情ばかり強調し、加害を伝えないのかとモヤモヤを持ってきた〉〈結局これは戦後報道文化における広島スクールや8月ジャーナリズムの帰結であり(略)げんざい隆盛を極める在日コリアンヘイトと綺麗につながったものでもある〉  今回、最も責任が問われるのはツイートの作成者でも新井氏でもなく、発信したNHK広島であることは間違いない。さらに言えば、広島・長崎を含めて戦争の記憶を「日本人」の証言だけで継承しようとする日本社会全体の「内向き」の姿勢も問われるはずだ。 (植松青児・編集部、2020年8月28日号)

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