夜間、倒壊した家屋の下に人がいないか捜索する救助犬＝1月5日、石川県珠洲市（日本レスキュー協会提供）

　災害現場で生き埋めになるなどした被災者の捜索に貢献する災害救助犬。大きな災害が起きるとニュースで活動の様子が伝えられることもあるが、社会的にはまだ認知度が低いのだという。福岡、佐賀県などと救助犬の派遣協力協定を結んでいる、NPO法人「日本レスキュー協会」（兵庫県伊丹市）の佐賀県支部長、岡武さんに救助犬の「今」を聞いた。 　（特別編集委員・長谷川彰） 　－そもそも災害救助犬とは、どういうものか。 　岡　すぐれた嗅覚を持つ犬にその特性を生かしてもらい、地震や土砂崩れなどで家屋が損壊するなどした現場で、においを手がかりに行方不明者の存在を探知するのが役割だ。1995年の阪神大震災を機に知られるようになった。私たちの協会も、その時に発足している。 　－現場ではどう動く。 　岡　救助犬とペアで活動する私たちハンドラーが、犬の反応を基に、不明者がそこにいる可能性が高いと判断したら、情報の一つとして消防などの救助隊員に伝えるのが基本。広範囲で家屋が被災している現場では、救助隊もどこから着手するのか判断が難しい。ある程度絞り込む必要があり、突破口を開く場面で救助犬がお役に立てる。 　ただ、混乱した現場は、さまざまなにおいが混ざり、がれきに阻まれ容易に近づけないことが多い。救助犬が即座ににおいを嗅ぎ分けほえて知らせる－といった、訓練や実演で見られるようなケースはほとんどない。その場で動きを止めたり、尾の振り方が変わったりなど犬が示す微妙な反応を、信頼関係を結んだハンドラーが慎重に読み取り進めるやり方が大半だ。 　－救助の成否まで現場で見守るのか。 　岡　われわれの仕事は救助隊に不明者がいそうな場所の情報を迅速に伝えること。大災害時には、役目を果たしたら速やかに次の現場に移ることが大半。後から、情報提供した場所のそばで不明者が発見されたなどと伝えられることはあるが、すべての現場の成否が把握できるわけでもない。 　　　　　◆　　　◆ 　－元日の能登半島地震の際も現地で活動したのか。 　岡　石川県とは派遣協力協定を結んでいたこともあり、要請を待つことなく現場に向かった。移動しながら被害が大きいとみられる自治体と連絡を取り、珠洲市での活動が決まった。 　1月2日の夕方にたどり着くと、まず、市長の了承を得て現地の消防本部の指揮下入り。119番通報の中から生き埋めの恐れがある現場の情報をメモでもらい、早速、活動を始めた。 　本格化したのは3日の朝から。各地から緊急消防援助隊や救助犬の団体が集まる一方、消防の指揮支援隊も入り、組織的な動きが組み立てられるようになった。そこで、われわれは情報を集約し、各団体に振り分ける調整役も務めた。 　熊本地震の時、そうした連携・分担がうまくいかずに、十分な成果を上げられなかった反省があり、それを教訓にした。 　－今回は連携できたか。 　岡　9日間で延べ15の救助隊から要請があり、われわれも含む8団体の108人、救助犬75頭の現場派遣を調整することができた。お互いの協力関係ができたので混乱は生じなかった。 　国をはじめとする公的機関で構成される災害対策本部の中に、われわれ民間団体も仲間入りし、不明者捜索の一部を担うことへの理解や信頼は、近年ようやく浸透してきた実感がある。申し出ても使ってもらえないケースはまだあるが、実績を重ねて理解を得たい。 　－平時の活動は。 　岡　救助犬の育成と訓練が主体だ。現在、育成中の犬も含め9頭がおり、うち4頭が実働している。育成期間は2年半から3年。ただ、現場で高い精度で活動できるレベルに達しない犬も出る。厳しい訓練を経験しても、災害現場は危険が伴い想像以上に過酷。無理はさせられない。 　－活動費はどう賄うか。 　岡　協定に費用負担を盛り込んでくださる自治体もあるが、私たちの協会は被災自治体からお金をいただこうとは思っておらず、費用はボランティア精神で独自に集めるのが基本方針。大災害時には幅広い方々から寄付が集まることが多い。理解者を増やしていくことも大切と感じている。