「今すぐ出ていけ」義父の命令は絶対?子がいない未亡人の絶望
夫亡き後、折り合いの悪い義父母から「今すぐ家から出ていけ」と命じられた妻。「自分亡き後も妻が生活に困らないように」と用意された夫の遺言書を読ませるも、義父母は「無効だ」と突き返し…。どれだけ無情でも、義父母の言い分には絶対に従わなくてはいけないのでしょうか? また、配偶者を確実に守るためには、どのような遺言を書くべきだったのでしょうか。※本連載は、楠部亮太弁護士、中川紗希弁護士、平田久美子税理士ら監修の『失敗しない遺言とお墓のはなし』(税務研究会出版局)より、一部を抜粋・再編集したものです。登場するすべての事例・住所や氏名などはいずれも架空のものであり、実在の人物等とは関係ありません。
【事例】「子のない妻」にマンションを遺したはずが…
小林早苗(仮名)の目の前に立つ義父。早苗が記憶していたよりも白髪が増え、長い歳月が流れたことを改めて知らされた。早苗は資産家と結婚したが、義父母とは折り合いが悪く、いつからか正月すら顔を出さなくなった。そんなことはどうでもいい。早苗はこの先どうしたらいいのか、途方に暮れていた。夫の葬儀が終わり、ほどなく義父は早苗に分厚い封筒を手渡す。中には、帯付きの札束が入っていた。 「我々はあなたにはもう、かかわりたくないのだよ」 義父は早苗に出て行けと言うのだ。 「早苗さん、あなたが暮らしているマンションはもともとは妻のものだった。彼女は私の反対を押し切って息子の稔(仮名)に渡したんだ。今、彼女は後悔している。ということで返してもらうよ」 「遺言書はあります」 義父は紙に目をやると一笑に付す。 「早苗さん、これは無効だ。出ていくことが決まったんだから、さっさと荷物をまとめてくれ」 (被相続人の遺言書は図表2参照) <無効と言われた稔さんの遺言書…どこが「残念」なのか?> 残念ポイント(1) ×【遺言書】 本文のワープロ書きはNGです。 残念ポイント(2) ×【その他】 ・メモ書きを印刷しただけの遺言書はNG ・作成日付がない ・署名 ・押印がない ●他にも残念な点が…⇒ ×【早苗に一任します】 「一任する」はなんとなく、早苗さんに全財産を相続させると取れますが、全財産の事務手続きを一任するとも解釈できます。