【40代・50代、心不全パンデミックに要注意!③】コロナ後遺症に多い心筋炎・心膜炎に要注意!
命に直結する虚血性心疾患ってこんな病気
心臓の病気で最もよく耳にするのが、狭心症や心筋梗塞だ。 「狭心症は、心臓の筋肉に血液を送り届ける冠動脈(かんどうみゃく)が狭くなり、一時的に血流が不足する病気です。一方、心筋梗塞は冠動脈が完全に詰まり、血液が流れなくなって心筋が壊死する病気です。これらは総称して虚血性心疾患と呼ばれます。なかでも心筋梗塞は突然死、時に瞬間死を引き起こすこともあり、原因となる動脈硬化を予防することが重要になります。 動脈硬化は血管が柔軟性を失い、硬くなった状態です。血管内に悪玉(LDL)コレステロールなどによってできたプラークがついて狭くなったり、血栓を生じて詰まりやすくなってしまいます。動脈硬化の原因として特に注意すべきは、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病です。 狭心症や心筋梗塞は、特徴的な症状が現れます。それは手のひらで示す広い範囲の胸の痛み。指先で示す狭い範囲ではありません。 一般に狭心症の胸痛は2~3分と短く、安静にしていると治まります。一方、血管が完全に詰まって発症する心筋梗塞は、安静にしても治まらず、冷汗や呼吸困難などが現れ、時間とともに悪化します。 心筋梗塞は、前兆なく突然発症することがあり、しばしば命にかかわります。たとえ命が助かっても、ダメージを受けた心筋は元に戻らず、心臓の働きが弱くなってしまいます。重い心不全になると、息切れやむくみがひどくなり、日常生活が難しく、適切な治療を受けなければ予後もよくありません」
心臓肥大にも注意が必要だそう。 「心臓肥大は心筋が分厚くなる病気です。健康診断や人間ドックの結果でよく見かけるのが高血圧による心臓肥大です。高血圧が続くと、全身に血液を送り出す心臓には大きな負担がかかります。この状態が続くと心臓の筋肉は徐々に厚くなり、心臓肥大してしまうのです。 高血圧による心臓肥大は、たとえ症状がなくても心不全のステージがAからBに進んだ状態です。これは心筋梗塞や脳梗塞、重い心不全などを発症する一歩手前の危険な状態と考えていただきたいのです。 健康診断で血圧が高めだったり、心電図で心臓肥大を指摘されても、そのまま放置している人は少なくありません。この状態を無視せず、まずは危機意識を高めて、心不全の進行を防ぐためにしっかりマネジメントしましょう。 改めて自分の健康診断や人間ドックの結果を見直してください。高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病がある場合は、たとえ症状がなくても心不全の初期段階であることを意識しましょう。健康への意識を高め、日々の生活のなかで心臓にしのび寄る危険因子を取り除くことが大切です。そうすることで、心不全の進行をしっかり防ぐことができます」 ※心不全のステージについては第2回<【40代・50代、心不全パンデミックに要注意!】40代からの心臓をむしばむ、5大リスクとは?>参照。
【教えてくれたのは】 大島一太さん 循環器内科医。大島医院院長。東京医科大学循環器内科学分野・同大学八王子医療センター循環器内科兼任講師、日本看護協会看護研修学校非常勤講師、日本循環器学会心不全療養指導士実務部委員、日本心臓病学会特別正会員・心臓病上級臨床医など併任。生活習慣病から重症心臓病まで、地域密着型の開業医と大学病院の専門外来を兼務し、予防医学から専門性の高い心臓病治療までを広く実践しているスペシャリスト。『100歳まで元気でいたければ心臓力を鍛えなさい』(かんき出版)など著書多数。 イラスト/内藤しなこ 取材・原文/山村浩子