【40代・50代、心不全パンデミックに要注意!③】コロナ後遺症に多い心筋炎・心膜炎に要注意!
新型コロナウイルス感染症の後遺症として最近よく耳にする「心筋炎」や「心膜炎」とはどんな病気なのだろうか? ほかにも「狭心症」や「心筋梗塞」といった心臓の病気について、心臓病のスペシャリストである循環器内科医の大島一太さんに伺った。
コロナ後遺症で心臓疾患が増えている
「多くの感染者を出した新型コロナウイルス感染症。この病気の難しい点は、肺炎だけでなく、回復後にも一部の人に後遺症が残ってしまうことです。自覚的な体調不良がなくても、心血管病のリスクが高まることもわかってきました」(大島先生) 日本で新型コロナウイルス感染による心臓の後遺症を調査した報告がある。中等症から重症の新型コロナで入院した患者さんのうち、入院中または回復後に、血液検査で潜在的な心筋障害や心不全※が判明した人たちを追跡調査したものだ。 ※心臓は負荷や傷害を受けると、血液中にBNPやトロポニンといった特定の物質を放出する。これらの検査値が高い状態は、たとえ症状がなくても潜在的に心不全や心筋障害があるととらえることができる。 調査の結果、退院3カ月後には26%の患者さんが心臓のMRI検査で心筋炎と診断され、42%の患者さんに何らかの心臓の障害がみられた(※)。この数字は想定以上のものなのだそう。 (※)Shingo Kato,et al.Myocardial Injury by COVID-19 Infection Assessed by Cardiovascular Magnetic Resonance Imaging – A Prospective Multicenter Study. Circulation Journal.DOI: 10.1253/circj.CJ-23-0729 確かに新型コロナウイルス感染症の後遺症として、「心筋炎」や「心膜炎」という病名をよく耳にするようになった。では、これらはどんな病気なのだろうか?
「心筋炎はその名のとおり、心臓の筋肉である心筋に炎症が起こる病気です。これにより心臓のポンプ機能が低下し、心不全を引き起こします。原因はウイルスや細菌の感染、膠原病、薬物など多岐にわたります。 症状は無症状のこともあれば、風邪のような症状、胸痛、動悸、呼吸困難、さらに命にかかわる危険な不整脈や血圧低下によるショック、重い心不全を引き起こし、死に至ることもあります。 心膜炎は、心臓の外側を覆っている心膜に炎症を生じる病気です。心膜は袋状に心臓を覆い、心臓と心膜の間のスペースを心嚢(しんのう)といいます。心嚢には心嚢液という液体が少量貯留し、潤滑液として心臓を動きやすくしたり、外からの衝撃をやわらげる役割をしています。 心膜炎も感染症や膠原病、心筋梗塞、悪性腫瘍、薬物、外傷など原因はさまざまですが、なかでも急性心膜炎の原因の大半を占めるのがウイルス感染です。 心膜炎になると、心嚢に多量の心嚢液がたまり、心臓を圧迫してポンプ機能を阻害します。症状は深呼吸で悪化する胸痛や呼吸困難で、軽症の場合は安静で治りますが、重症化して心嚢液が過剰に貯留すると、血圧低下を招き、危険な状態に至ります。心膜炎と心筋炎が同時に起こることもあり、注意が必要です」 心筋炎や心膜炎は、新型コロナウイルス感染症の合併症や後遺症として広く知られるようになった。一方、コロナワクチン接種後の副反応としても話題になった。現在では多くの調査から、ワクチン接種後に心筋炎や心膜炎を発症する危険性は極めて低く、そのほとんどが軽症であることから、ワクチン接種が否定されているわけではないようだ。