時計業界の風雲児マニュエル・エムシュCEOに聞く新生「ルイ・エラール」の次なる一手
「ヴィアネイとのコラボレーションは電話の誤操作がきっかけでした」
Ref.LE85248AA13.BVA158 65万9450円 スペック:自動巻き(SW266-1キャリバー)、毎時2万8800振動、約38時間パワーリザーブ。SSケース(シースルーバック)。直径39mm、厚さ12.82mm。カーフストラップ。5気圧防水。 これまでのキャリアでコラボレーションウオッチを連発してきたエムシュ氏が、以前は人間関係が苦手だったとは驚きの事実である。ルイ・エラールにおいては、そのコラボレーションウオッチの誕生秘話もかなりユニークだった。 「ヴィアネイとのコラボのきっかけは本当に偶然の産物で。ある日、私が山でゴンドラに乗ったとき、ポケットの中で電話が誤作動してしまい彼に連絡を入れてしまっていたんです。私はそれを知らないまましばらくすると、ヴィアネイが電話をかけてきたので『どうしたの?』と聞くと、『着信があったから折り返したんだけど』って。だから私はお詫びもそこそこに『これは運命的な電話だね。一緒に時計を作らないか?』と誘ったんですよね(笑)。新生ルイ・エラールの第1作となったアランとのコラボレーションも今だから言える話ですが、実はブランドの再建プランを私が投資家にプレゼンする場で話したことがきっかけでした。実はその時、まだ彼には承諾をとっていなかったんですよね(笑)。このように、これまでのコラボレーションモデルは最初のやり取りからして様々なプロセスを経ているんです」
たとえキャラクターに版権利用料を支払うようなコラボレーションであっても、手を取り合うのはあくまで人と人であるとエムシュ氏はいう。とくにルイ・エラールにおいては、相手の話を聞き、尊重し、互いに高めあうことで生まれるタイムピースでなければ意味がないのだ。 「1足す1が3になるようなタイムピースを生み出すには、チームワークが欠かせないのです。私たちには特別なムーブメントはありませんから、その分をあらゆるディテールの表現の追求に費やすことができます。ノワールモンではメティエダールを駆使したコラボレーションを推し進めていきます。実は来年に出す予定の2340には、誰か1人と手を組むのではなく、もっと抽象的な対象をパートナーとして協業するプランがあります。多くの方が楽しんでいただけると思いますので、そちらもぜひ楽しみにしていてくださいね」 筆者が約5年前に行ったインタビューには前CEOも同席していたが、そのときすでにエムシュ氏はスイス国旗の十字になぞらえて「新生ルイ・エラールは4つの方針を考えている」と述べていた。今回のインタビューに出た「ノワールモン」「2300」「コラボレーション」「パートナー」は、当時に彼が語っていたプランを体現する重要な柱となるのだろう。この5年の間に起こったパンデミックと戦争により世界は激変したが、それをルイ・エラールが耐え抜くばかりか発展までさせたエムシュ氏の手腕には唸るばかり。次なる一手となる「パートナー」の存在が明らかになる来年が、今から待ち遠しい。
「ノワールモン X “レギュレーター ルイ・エラール X ヴィアネイ・ハルター II ”」
Ref.LE85246AA03.BVA172 109万4500円 スペック:自動巻き(SW266-1キャリバー)、毎時2万8800振動、約38時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース。直径43mm、厚さ10.95mm。カーフストラップ。5気圧防水。世界限定178本。 ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。
TEXT/Daisuke Suito(WATCHNAVI) Photo/Kensuke Suzuki (ワン・パブリッシング)