牛乳応援なぜ注目? 「食ロス減」浸透 廃棄にインパクトも
年末年始に懸念された需給緩和による生乳廃棄は回避できた。需給は予断を許さない状況が続くが、この問題は多くの人の関心を集め、牛乳応援消費の機運が全国で盛り上がった。農畜産物の需給緩和はこれまでもあったが、なぜ今回特に注目されるのか――。
普段、生乳需給は農業や酪農乳業の専門紙しか扱わない話題。しかし今回は「生乳5000トン廃棄の可能性」という言葉のインパクトが強く、テレビニュースを皮切りに12月中旬から一斉にメディアが取り上げた。岸田文雄首相や金子原二郎農相も記者会見で言及。酪農家の苦境の声がインターネット交流サイト(SNS)などを通じて拡散され、芸能人も呼応した。 指定生乳生産者団体(指定団体)の関東生乳販連は「年末の飲用での生乳処理量が約1割上がり、加工処理工場の受け入れが計画的に進んだ」と明かす。
「楽しみながら参加」
生乳は日持ちしないため需給バランスが崩れないよう、酪農家・生産者団体と乳業メーカーの結び付きが強い。機動的な商品開発や販促活動につながった。農業団体も盛んに応援企画を展開した。 さまざまな商品や料理など多彩な提案があったことも後押しした。生乳割合を増やした飲料や国産使用を前面に出した乳製品が登場。小売りや飲食店、ホテル、温浴施設に至るまで牛乳の割引や無償提供も広がった。 レシピ運営会社は牛乳料理の特集を組み、SNSで牛乳を大量に消費できるレシピを発信した。「楽しみながら参加できた」との声がSNSでも見られた。
流通経済研究所主席研究員の折笠俊輔氏の話
牛乳は1リットルパックが200円程度と手頃な価格で購入できる。コロナ下の年末年始という時期は、家庭消費を呼び掛けやすかった。 「食品ロスを発生させてはいけない」という、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の考えが社会に根付いたことも大きい。日持ちしない野菜など、他の農産物でも応用できる。 ただ、応援消費は繰り返そうとしても効果が薄れていく。ピンチをきっかけに消費者の理解を獲得し、消費の底上げを図るようにしたい。
日本農業新聞