「ある生徒の身長は190cm未満である」の否定文は「ある生徒の身長は190㎝以上である」…なんかヘンじゃない??
前編記事「「天気がよい」⇒「あなたの家に遊びに行く」という論理文。では、雨が降ったときに遊びに行くのはアウトかセーフか」では数学においては、日常会話とは異なる場合があることを解説してきた。続くこの後編記事では数学の問題を解く上で混同しやすい問題などを引き続き解説していきます。 【数学間違い探し】大学生でも間違える計算「40-16÷4÷2」の答えは? あなたは、論理的に話を進められる「できる人」に憧れませんか? 日本語能力の向上に直結し、日常生活にも役立つ「論理」問題をおさらい。頭をやわらかくして挑戦してみてください。
「すべて」と「ある」
次に述べたいことは、「すべて」と「ある」の用法である。 最近、いろいろなところで「自分は文系の数学は学びましたが、AI時代を視野に置いて、機械学習の基礎となる数学を学ぶことは可能でしょうか」という質問をたまに受ける。 一般的には、数学の内容を詳しく尋ねるようなものが多いが、筆者は「『すべて』と『ある』の用法、とくにそれらの否定文をよく理解していることが大切です」という回答をする。 実際、高校数学をよく“理解”している人にとっては、大学数学の入門は難しくない。 それは、微分積分だろうが線形代数だろうが、基礎の部分は「すべて」と「ある」の用法が鍵となっているからである。 一方、高校数学を“計算”だけで乗り越えてきた人にとっては、大学数学の入門は相当苦労することになる。ちなみに昨年上梓した拙著『新体系・大学数学入門の教科書(上下)』では、「すべて」と「ある」の用法から説明した。
「誰かと誰かの」誕生日が同じになる条件
ここで「すべて(all)」と「ある(some)」の用法が、算数・数学教育全般に深く関わっていることを述べよう。 その前に留意していただきたいことは、英語圏の子ども達ならば生まれながらにして「all」と「some」の使い方を身に付けながら育つものの、日本の子ども達にはそれがない。 それどころか、日本における高校までの算数・数学教育では「すべて」と「ある」の用法については、あまり注意が払われていない。本当は算数教育の段階から、しっかり学んでおきたいものである。 筆者は小学校での出前授業もたくさん行ってきたが、ある学校で 「この学校の生徒数は約400人です。そこで、1年は365日か366日なので、この学校のある2人の生徒は誕生日が同じですね。このような性質を『鳩の巣原理』と言います」 と最初に発言したとき、ある生徒から 「先生、だったら、僕と誰が同じ誕生日なんですか」 と質問され、 「僕と誰かではなく、誰かと誰かなんだよ」 と答えたことが懐かしい思い出となっている。