2013年11月、北アルプス真砂岳での雪崩事故の教訓――、11月でも雪崩は起きる・温暖化でもドカ雪は増える可能性
7名が亡くなった真砂岳・雪崩事故の概要
今回は、2013年11月23日に北アルプスの真砂岳で発生した雪崩事故について取り上げたいと思います。 【画像】 北アルプスの真砂岳での表層雪崩の発生状況 (出典:防災科研による報告書より) 最近の研究では、温暖化が進んで全国的に積雪が減少する傾向にあっても、大雪山などの北海道内陸部の山、北アルプスなど中部山岳の北部では逆に積雪が増える可能性があると指摘されています。一口に温暖化と言っても、その影響は単純なものではないようです。 当時の報道や防災科研による報告書を基にして、真砂岳雪崩事故の概要についてまとめると以下にようになります。 2013年11月23日の午前10時55分頃に、真砂岳の西側斜面の大走り分岐付近を起点として、大走沢で幅約30m、長さ約600mの雪崩が発生した。山スキーに来ていた2名のグループと5名のグループの計7名が雪崩に巻き込まれて、全員が全身を雪中に埋没した状態となった。すぐに近くにいた山岳ガイドや山スキーヤーなどによる救助活動がなされ雪中から掘り出されたが、救助の甲斐なく病院で7名全員の死亡が確認された――。 写真を見ると、破断面の矢印の下では、尾根の左側の雪がごっそりと無くなっていて、段差になっている様子が良く分かると思います。ここが表層雪崩が発生した起点で、地図にすると以下の場所になります(図2)。
雪崩事故現場では前日まで約150cmの積雪があった
では、いったいどのような気象状況によって11月の雪崩が発生したのでしょうか。まず当時の地上天気図を見てみましょう。 11月17日から20日にかけて日本海低気圧が発達しながらオホーツク海に進み、日本付近は18日から22日にかけて11月としては強い冬型気圧配置になっています。この悪天によって立山の室堂付近では150cm近い降雪量となったそうです(日本雪崩ネットワーク情報)。 雪崩が発生した23日は、大陸から移動性高気圧が東シナ海に進んできて、冬型気圧配置は緩み、朝から晴れていて気温が上がっています。降雪直後の新雪雪崩というよりも、大量の降雪の後に気温が上がって表層雪崩が発生するというパターンでした(図3)。 <図3>11月17日、20日、23日のいずれも午前9時の地上天気図 (出典:気象庁)