目利きが選んだ、本当においしい日本のチーズ。
日本国内のチーズ工房数は年々増加の一途をたどり、いまや300以上。海外のコンクールで入賞を果たすものも登場している。家で食事をする機会が増えたいま、まず狙うべき国産チーズはどれなのか。 【続きを読む】「茶臼岳」など3つの国産チーズ 今回はチーズのプロとしてメディアや講演で活躍する圓子(まるこ)チーズさんがハード、青カビ、シェーヴル、白カビ、フレッシュと異なるタイプから、本当においしい5つの銘柄を厳選。 おいしさをさらに引き出す食べ方や、相性のよいドリンクとともに教えてくれた。目覚ましい進化を続ける国産チーズ、その魅力を体感してほしい。
「タカラのタカラ」──加熱すると旨味が増す、ハードタイプの逸品。
チーズ工房タカラがあるのは、その美しさから蝦夷富士とも呼ばれる北海道の羊蹄山(ようていざん)の麓。酪農一家に生まれた斉藤愛三さんが、同名の牧場タカラで生産されるこだわりのミルクを使い、奥深い味のチーズを生み出す。圓子さんが選んだ「タカラのタカラ」は、ハードタイプの熟成チーズ。国産ナチュラルチーズのコンクール「ジャパンチーズアワード2018」でグランプリを獲得した注目の一品だ。 「キャラメルやローストアーモンド、バタースコッチのような香ばしく甘い香りが心地よく、旨味やコクが味わえるチーズ。チーズ好きはもちろん、どんな方にも愛される味です」と圓子さん。そのまま食べても十分おいしいけれど、ひと手間加えるとさらなる喜びが。「パン・ド・カンパーニュなど味わい深い田舎パンに『タカラのタカラ』をのせたトースト。また、ジャガイモやれんこん、ズッキーニなどの野菜とともに焼くのもいい。このチーズは加熱することで旨味を最大限に引き出すことができるのです」
「ブルーチーズ」──数々の受賞歴を誇る、しっかりした塩味と濃厚な味わい。
1982年に長野県東御市で創業。国産ブルーチーズ製造の先駆けになるなど、日本のナチュラルチーズ工房としては長い歴史を刻むアトリエ・ド・フロマージュ。圓子さんお薦めの「ブルーチーズ」は、ヨーロッパに負けない青カビチーズを目指して30年以上前に開発を始めたもの。いまでは国内外のチーズコンテストで数々の受賞歴を誇るほど、専門家の評価は高い。 「なめらかな食感に青カビ特有の刺激、しっかりした塩味、濃厚な味わいが特徴。ヨーロッパの青カビチーズを思わせる本格派でありながら、日本らしい繊細さと品のよさを感じさせます。いつでも安定した味が楽しめる点も素晴らしい」と絶賛する圓子さん。良質な青カビチーズは甘いものとの相性が抜群。「ハチミツや干しブドウはもちろん、リンゴなど甘み&酸味のあるフレッシュフルーツと合わせてもいいですね」。料理に使えば、活躍の幅がもっと広がる。「セロリやキュウリ、アンディーブなどの野菜につけるディップソースとして。パスタソースやピザのトッピング、さらに椎茸などキノコ類やさつまいもにのせて焼きチーズにしてもおいしい。チーズそのものの味が濃いので、料理のいいアクセントになってくれます」
写真:宇田川 淳 文:小久保敦郎