おやつなのに「ご飯のおかず」として人気…受刑者200人の声を料理研究家が再現した「刑務所ごはん」のリアル
■三食を作るのは「炊事工場」の受刑者 「刑務所の食事」を作るのは炊事工場で働く受刑者たちだ。料理のプロではなく、むしろ不慣れな素人の手によって、数百人から千人以上の胃袋に収まる膨大な量の食事が毎日3度、欠かすことなく用意されている。 ただし、その献立を考え、調理工程を組み立てているのは専門の管理栄養士だ。総カロリー量や栄養バランスの計算も管理栄養士が責任をもっておこなっている。予算や食材ばかりでなく、調理機器や調理方法にも大きな制約が課されている環境で、調理経験に乏しい素人でも大量に作ることのできるメニューを考案するというのは、想像するだけで気の遠くなるような仕事だ。 日中の調理では、ときに栄養士の指導が入ることもあるようだ。しかし早朝4時台に起床して作業を開始し、遅くとも7時頃には配食を終えてしまわなければならない朝食の準備は、炊場の受刑者たちに委ねられている。味噌汁を除く副菜は、ほぼすべて既製の加工食品やふりかけ類などの組み合わせとなっているようだが、それも無理からぬことだろう。納豆や漬物類も朝食の定番だ。 本記事冒頭の写真は、受刑者たちから寄せられた手紙や献立表にもとづき再現した、ある日の朝食のイメージだ。味噌汁には一種類ないし二種類の具材が使われるが、これは施設によって方針が異なるようだ。ただし、少量の味噌を湯で溶いた程度の薄味という点だけは、多くの施設で変わらない。
■再現メニュー! 朝食編:麦飯と味噌汁で腹を満たす 刑務所の朝食は簡素だ。麦飯と薄い味噌汁、そしてわずかばかりの副菜二品という内容が基本形といえる。これが受刑者が従事する刑務作業の支えとなる。 米7:麦3の割合で炊かれた「麦(ばく)しゃり」とも呼ばれる麦飯が朝昼晩の主食で、これは全国の刑務所で共通している。「米といっても保存期間が過ぎた備蓄米の、さらに古くなったような米ですよ」と、四国と東北の2カ所の刑務所で計20年以上の服役を終えた元受刑者は苦笑する。 「味噌汁はとにかく薄い」とその元受刑者は言うが、とはいえ各地の献立を見るかぎり、具材はバリエーションに富んでいる。管理栄養士が心を砕いた結果だろう。チンゲン菜や小松菜といった菜物、キャベツや白菜、長ねぎ、玉ねぎ、ニラ、もやし、油揚げ、高野豆腐、わかめ、麩、カボチャ、インゲン、大根葉、揚げ玉など、たいてい二種類の具材が組み合わされ、単調に陥らないように工夫が凝らされている。 ■副菜二品は市販品をちょっぴり 副菜の二品は既製品を小分けにした物であることが多いようだ。鰹や鰯、鮪、秋刀魚といった魚類のフレークや味付の缶詰が目立ち、そこに海苔や昆布の佃煮、えびみそやねり梅、のり玉・鮭・鰹・たらこ等のふりかけ、野沢菜やキュウリや大根の漬物、納豆、ピーナッツみそ、なめ茸、きんぴらごぼうや菜物のおひたしなどが小さく盛られる。朝食の定番ともいえる卵はどうやら食中毒を避けるために生で出されることはなく、既製品の“厚焼き玉子”はさておき“クリーンエッグ”や“たまご風味ソース”といった耳慣れない製品が供されている。