税理士「無理に法人化する必要はない」…個人の不動産投資家“だけ”に与えられた「5つ」のメリット
不動産投資が軌道に乗り、「法人化」のタイミングをうかがっている方も少なくないでしょう。しかし、一概に「個人」より「法人」のほうがいいかというと、そうともいえません。今回は、税理士法人グランサーズの共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏が、「個人」で不動産投資を行う場合のメリット・デメリットについて解説します。 職業別「平均年収」ランキング…<令和4年賃金構造基本統計調査>
不動産投資するなら、「個人」と「法人」どちらが有利?
――不動産投資って、個人でやる方法だけじゃなく法人でやる方法もあるじゃないですか。経営者が不動産投資をする場合、「個人」と「法人」どちらが有利なんですかね? 黒瀧氏(以下、黒)「難しい質問ですね。その人の状況によって変わります。不動産投資を個人でやる場合と法人でやる場合では、特に税金の面と融資の面で違いが出てきます」 ――どのような違いがあるのでしょうか? 1.税金の違い…不動産投資で大儲けした場合、「個人<法人」 黒「個人の場合、不動産投資で得られる収入は『不動産所得』に区分されます。不動産所得は総合課税のため、最終的には給与所得をはじめ他の所得と合算させたうえで税額を計算します。 そして、個人の所得税には『超過累進課税』が採用されており、課税所得が多くなるほど税率が大きくなるしくみです(図表1)」 ――つまり、個人の場合は不動産所得が多ければ多いほど、税金が高くなる可能性が高いってことですか。 黒「はい、そのとおりです。 一方、資本金1億円以下の法人の場合、年800万円までの所得には15%の税率、年800万円を超える部分には23.2%の税率で固定されています。 他にも法人住民税や法人事業税などがかかりますが、すべてを合わせた法人実効税率で見ても、税率は約25%~34%です」 ――なるほど、法人の場合は税率が固定されているから、不動産で大儲けしたときは個人よりも税金が少なく済む可能性があるんですね。 黒「そうなんです。ただし、逆にいえば所得が少ないときは法人のほうが税率が高くなってしまいます。 ですから、法人化するのであれば給与所得が高い人であったり、不動産投資である程度の収入を得てからがベターです」 2.融資の違い…選択肢が多いのは「法人」だが、設立したては「個人」のほうが有利 黒「不動産投資を大規模に行っていく場合、金融機関から融資を受けることも視野に入ってきます。 個人の場合は金融機関が不動産投資のために用意している「アパート・マンションローン」を活用することがほとんどですが、法人の場合はこの「アパート・マンションローン」のほか、事業用の融資を受ける選択肢もあります」 ――法人のほうが融資の選択肢が多いんですね。ということは、融資を受ける場合は法人のほうが有利ということですか? 黒「そうとも限りません。たしかに選択肢は法人のほうが多いかもしれませんが、個人の場合はローン審査の際、物件の収益性や担保評価、個人の信用力が重視されます。 他方、法人の場合は業績が重視されます。法人を設立したばかりだと業績がないため、融資を受けられる可能性が低いです。よって、早く融資を受けたいのであれば、個人のほうが有利になる可能性が高いといえます」 ――なるほど、法人は融資の選択肢が広い分、融資を受けられるようになるまで時間がかかる可能性があるんですね。それぞれ一長一短ありますね。