定番カクテル「オールドファッションド」、江戸の流行取り入れ変身 コンラッド東京
連載《hotel TIPS》Vol.22
編集長がホテルのおいしいものや楽しみを探しに行く「hotel TIPS」。アート作品に由来するカクテルが今回の主役です。 【1分動画・写真はこちら】「アートなホテル」のバーはどんな雰囲気? 魚の形の「チュイール」も詳しく 個性豊かな絵画や彫刻に彩られたホテルは少なくありませんが、なかでもコンラッドは世界各地の拠点でアート重視の姿勢を一貫して掲げています。コンラッド東京(東京・港)でも花鳥風月をテーマとした芸術品が館内のあちらこちらで楽しめます。それらの作品から着想を得たカクテルが2024年10月に登場すると聞き、一足早く味わいたいと、バー&ラウンジ「トゥエンティエイト」に向かいました。
■多くのアートがあるホテル 探す楽しみも
ホテルのエントランスでまず出迎えてくれるのは漆塗りの朱色のオブジェ。カラーの花をモチーフにした「ピュリフィケーション(浄化)」(田中信行)という作品で、来訪者の心を浄化する意図で据えられています。 ロビー階のエレベーターホールを見下ろす絵画「水と歴史」(越前谷嘉高)は、東京という都市の発展に重要な役割を果たした隅田川を描いた作品。ロビーに集う人々を包み込むような「人よ」(篠田桃紅)は、和紙に筆と墨で描かれた壁画です。こうした作品を探索し、静かに味わう楽しみがこのホテルの持ち味の1つといえるでしょう。 今回の主役であるアートは、客室に向かうエレベーターホールにある屏風絵「何羅魚(からうお)」です。頭は1つで10の体を持つこの伝説上の魚は、江戸時代、邪気を払ってくれる大切なモチーフとして尊ばれました。江戸の庶民は何羅魚をかたどった品を、お守りのように持ち歩いていたのだとか。鋭い眼光が印象的です。
■江戸時代の人気アイテムに着想
「江戸時代に流行したファッションアイテムの『何羅魚』を、クラシックカクテルの定番である『オールドファッションド』に重ね合わせて、新しいカクテルを考えました」。そう話してくれたのはバーマネージャーの田中大智さんです。 名付けて「大江戸オールドファッションド」。 「海外のお客様は、カクテルといえばオールドファッションド、という方が圧倒的に多いのです。そういうお客様に、あえてコンラッドならではのオールドファッションドを楽しんでいただけたらと思いました」 ウイスキーカクテルの代表格であるオールドファッションドは、ウイスキー、砂糖、ビターズ(香りがついたリキュール)といった材料を合わせたシンプルなもの。ウイスキーにほんの少しの甘みと苦みが加わった味わいです。田中さんは日本の材料を合わせてアレンジし、日本風の「大江戸オールドファッションド」を完成させました。 ウイスキーはジャパニーズウイスキー。そこに、カカオバターをつけ込んだ麦焼酎を加えます。甘さは黒糖、メープルシロップ、そして多様なスパイスがつけ込まれたビターズを使います。 2つのお酒を「ダブル使い」しているのは、ウイスキーにないフレーバーを麦焼酎で補完するため。黒糖やカカオバターを効かせて、うまみを追求したといいます。