ヴェネチア・ビエンナーレ日本館の金銭的課題。日本のアートシーンが国際的に存在感を示すために必要なこととは?
国際交流基金からの回答
こうした意見を受け、国際交流基金はどのような見解を持つのか。今後制度や取り組みが変更される可能性はあるのかを同基金の担当者に聞いたところ、以下のような返答を得た。 「ヴェネチア・ビエンナーレの日本館事業は国際交流基金にとって非常に重要な事業のひとつであり、その主役である作家やキュレーターがよりやりやすい環境を作ることは極めて重要であると考えていますので、今回のご指摘を真摯に受け止め、今後の改善につなげたいと思います。 日本館の予算につきましては、直接的に展覧会に関係する予算と運営管理的な予算とを合わせたものが総予算となりますが、物価高や円安、また会期の長期化に伴う人件費の増加の影響により費用も年々大幅に増えており、増加分を国際交流基金の予算内で何とかやりくりしているというのが現状です。 作家や関係者の方々には、展示に必要な準備のための費用やご出張の手配などは原則としてご提供しております。またパーティやファンドレイザーへの謝金もお支払いできないわけではなく、外部会場でのパーティを国際交流基金主催で行ったこともありますが、展覧会によってそれぞれの表現方法や重点の置き方により必要と考えられる費目や規模が異なりますため、全体の予算を割り当てていくと、そこまで行きつかないというのが率直なところです。キュレーター等の謝金につきましては、現在改訂を検討中です。 これまで各回の作家や関係者の皆様の創意工夫によって、展覧会を実現することができていましたが、各国が威信をかけて展示を行うヴェネチア・ビエンナーレで十分なプレゼンスを発揮するために、より効率的で効果的な運営を行うべく、組織立って資金調達に取り組む必要性を感じております。その意味で、今回多くの方々のご好意とご協力によってファンドレイズがなされたことに深く感謝するとともに、これを機に私ども国際交流基金も、資金調達や運営体制を含め、作家やキュレーターの方が展示の制作に専念できる環境を整えられるよう、努めてまいりたいと思います」