夢の「錦江湾横断道路」が描く未来。鹿児島の薩摩と大隅の半島を結ぶ壮大なプロジェクトの行方は?【いま気になる道路計画】
鹿児島県の薩摩半島と大隅半島に挟まれた「錦江湾(鹿児島湾)」。実は薩摩半島と大隅半島の間を長大橋梁や海底トンネルでつなげる「錦江湾横断道路」という構想が存在していることをご存じだろうか。果たして、この夢の架け橋はどのような姿を描くのか。候補ルートの検討結果や今後の見通しについてまとめる。 【画像】候補にあがった3ルートは? 図で確認! どれに決まった!?
夢の「錦江湾横断道路」とは?
「錦江湾横断道路」は、鹿児島県の薩摩半島と大隅半島の間にある「錦江湾(鹿児島湾)」をまたぐ長大橋梁や海底トンネルをつくる構想だ。 薩摩半島と大隅半島を往来する手段は鹿児島~桜島間の「桜島フェリー」、鹿児島~垂水(たるみず)間の「鴨池・垂水フェリー」、指宿(いぶすき)~南大隅間の「フェリーなんきゅう」の3つがあるが、両半島の居住者からは、かねてから「錦江湾横断道路」を求める声があがっていた。 このような背景から、鹿児島県は2009年から2011年にかけては「錦江湾横断道路」の実現可能性についての調査や検討を実施。絵空事のようにも思えるが、構想の中身はかなり具体的なものになった。 検討されたのは以下の3ルートだ。 【ルート1】鹿児島~桜島 鹿児島市の中心部と桜島を結ぶ海上距離2kmと最短距離のルート案。他の2案と比較して水深も浅い。したがって整備費用を抑えられ、最も費用対効果に優れる。ただし桜島と接続するため、火山活動による降灰などの影響を受ける可能性がある。 【ルート2】鹿児島~垂水 鹿児島市の鴨池から桜島の南に位置する垂水を結ぶ。将来予想される交通量や経済効果が最も高いルート案で、桜島の火山活動の影響も少ないとみられる。しかし海上距離が14kmと長いうえ水深も180mと深く、非常に高度な土木技術を用いなければならない。コストとベネフィットが見合わないばかりか、現在の土木技術では実現は難しいとみられる。 【ルート3】指宿~根占 ルート1とルート2より南の湾口部で指宿市と南大隅町の根占(ねじめ)を結ぶ。利点は国道220号や国道226号などと接続して環状の道路網となり、両半島を周遊できるようになること。桜島から離れるため、火山活動の影響はほぼ受けないことの主に2点だ。しかし将来予想される交通量が他ルートに比べて少ないうえ、海上距離も8kmと比較的長い。このことから、ルート2同様コストとベネフィットが見合わないとされる。 検討の結果、鹿児島県は、ルート1の鹿児島と桜島を海底トンネルや長大橋梁で結ぶのが最も現実的であると判断。錦江湾の景観保全や桜島の火山活動の影響を回避するといった観点から、海底トンネルとするのが望ましいとした。 九州と本州を結ぶ関門トンネル(国道)の海底部の延長は約7.8kmであることから、これよりは短いトンネルになるとみられる。
事業化に向けてこれから本格的に動き出すか
2011年を最後に、大きな進捗のないまま15年の年月が経過した2024年11月。鹿児島市や垂水市、鹿屋市の4団体で「錦江湾横断道路推進協議会」を発足した。いよいよ実現に向けた積極的な取り組みを進めるとみられる。 錦江湾横断道路の実現は、薩摩半島と大隅半島の経済圏をつなぎ、物流効率の向上や観光誘致に寄与するだけでなく、災害時の緊急輸送ルートとしての役割も見込む。それだけに「錦江湾横断道路推進協議会」の発足で気運を高め、官民一体となって実現に向かうことが期待される。
文=KURU KURA編集部 資料=鹿児島県