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ブンデス再開で見えたリスクと可能性。交代枠5人制の活用術、サッカーの新たな魅力を発見?

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 ドイツでブンデスリーガ1部と2部のリーグ戦が16日に再開した。新型コロナウィルス感染拡大の影響で約2ヶ月にわたって中断していた公式戦の開催にこぎつけたが、一方で急ピッチで準備を進めたことによるリスクも孕んでいる。負傷者が続出した再開初戦で見えてきた現実と、リスク回避のために導入された新たな施策がもたらす効果はどれほどのものなのだろうか。(文:舩木渉) 【熱血サッカー動画】ブンデスリーガ日本人最多得点数に並んだ岡崎慎司の泥臭いゴール集

●世界に先駆けブンデスリーガ再開  新型コロナウィルスの感染拡大を受けて世界各国でプロサッカーの公式戦が中断や延期を余儀なくされている中、5月16日にドイツでブンデスリーガ1部と2部のリーグ戦が再開へとこぎつけた。  スタジアムに入場できる人員は最低限に抑えられ、スタンドにファン・サポーターが入ることはできない。ベンチでのソーシャルディスタンス厳守やマスク着用義務なども課され、ゴールセレブレーションや握手などにも制限が設けられた。  さらに選手やスタッフは4日に一度のペースで新型コロナウィルスの感染有無を確かめる検査を受け、再開初戦までの1週間はホテルでの合宿生活を送った。これほどまでに厳戒態勢を敷いたうえで、欧州主要リーグでは最初のリーグ戦再開事例を作ったのである。  だが、新型コロナウィルスへの備えは万全でも防ぎきれないものがあった。それは選手たちの負傷だ。約2ヶ月間にわたって公式戦がなく、ギリギリまでチームとしての活動も制限されていたため明らかにコンディションを万全に整えるための練習時間が足りていない。  例えばドルトムントがチーム練習を始められたのは5月6日で、再開初戦のシャルケ戦が16日。つまり10日弱しか対人プレーをともなうようなトレーニングを積めていなかった。  ほとんどオフシーズンと変わらない状態から、公式戦をこなすための心身のコンディションを作り上げるために2週間足らずというのはあまりに短すぎる。一般的なプレシーズンは練習と試合を繰り返しながら1ヶ月近くかけて準備していく一方で、その半分の時間で練習試合もまともにできず、いきなり心身のテンションを一気に公式戦で戦える状態に持っていくのは極めて難しかっただろう。  実際、ブンデスリーガ1部再開初戦の9試合では負傷者が相次いだ。確認できているだけで試合前後に8人が負傷し、スタメンから外れたり、試合途中で交代を余儀なくされている。  ドルトムントではブンデスリーガ初先発の予定だった17歳のアメリカ代表MFジョバンニ・レイナが試合前のウォーミングアップ中に負傷してしまい、トルガン・アザールが代わりに登録されることとなった。だが、そのアザールも後半の77分に相手選手との接触で痛め、2分後にジェイドン・サンチョと交代した。  急きょ先発出場したベルギー代表MFは接触して倒れ込んだ際に苦しそうな顔で右足を伸ばすような動きをしており、何らかの筋肉系のトラブルを抱えていたように見えた。かなり疲労していたのは間違いなく、コンディションも万全ではなかっただろう。 ●9試合で8人が負傷。試合前に離脱者も…  この試合ではハーフタイムでベンチに下がったシャルケのDFジャン=クレール・トディボも、負傷が原因で交代していたようだ。35分にスプリントをかけて相手の突破を止めようとした際、スライディングした後に苦悶の表情を浮かべて自ら交代を要求していた。結局前半終了までプレーを続けたが、それまでに痛みを訴えて座り込む場面も見られ、足首を痛めていたようだった。  他にもホッフェンハイムのドイツ代表MFセバスティアン・ルディは、シュートを打った際に相手選手と接触して右足首を痛めて66分にデニス・ガイガーと交代。同じくホッフェンハイムのイーラス・ベブーも負傷によってハーフタイムで交代していた。さらに対戦相手だったヘルタ・ベルリンのペア・シリアン・シェルブレッドも右太ももが攣ってしまい、87分にサンティアゴ・アスカシバルと交代を余儀なくされた。  パーダーボルンのクラウス・ジャスーラや、ボルシアMGのマルキュス・テュラムの交代も負傷が遠因だと欧州メディアは報じている。見た目に深刻な印象はなくはっきり負傷者とは言えないが、レバークーゼンのナディーム・アミリも交代時に右太もも裏をさすって気にしていた。  過去も含めて全ての試合で統計を取っているわけではないが、1節の9試合で8人の負傷者というのは「多い」と感じてしまう。しかも同じ週末の2試合で負傷者がそれぞれ3人ずつ出るというのは、あまり聞いたことがない。特にラフプレーが多かったわけでないにもかかわらず、だ。  ドルトムントでは再開に向けた練習の中でMFエムレ・ジャンとMFアクセル・ヴィツェルが筋肉系の問題を抱えて隔離合宿を離脱し、シャルケ戦を欠場していた。このように急ピッチで調整を進めたしわ寄せが負傷のリスクを高めており、今後さらにスケジュールが過密になっていくことでより危険な状態を招きかねない。  選手たちをこうした負傷のリスクから少しでも遠ざけるため、ブンデスリーガでは世界に先駆けて「交代枠5人制」が導入された。再開後のリーグ戦ではこれまで「3人」だった交代の制限を「5人」に緩和している。  交代のタイミングはハーフタイムを除いて3回まで。つまり最大で4回、交代カードを切ることができる。国際サッカー評議会(IFAB)が提唱した一時的な競技規則の変更は、新型コロナウィルスの脅威を乗り越えた先のサッカーに、負傷リスク軽減とともに新たな魅力をもたらしてくれるかもしれない。 ●ブンデス再開初戦の交代枠活用状況は?  まず、ブンデスリーガ1部の再開初戦9試合で交代枠がどれだけ活用されたのかを見てみよう(※[ ]内の数字は同時に交代した人数)。 【5人】 シャルケ(HT[2]、74分、76分、87分) ヘルタ・ベルリン(79分[3]、87分、90分) パーダーボルン(HT、63分、73分[2]、88分) フランクフルト(HT、74分[2]、78分、83分) ボルシアMG(66分、78分[2]、90分[2]) ケルン(HT、71分、76分、83分[2]) マインツ(56分、69分、83分[2]、84分) ウニオン・ベルリン(71分[2]、81分、85分[2]) レヴァークーゼン(62分[2]、71分、85分[2]) ブレーメン(54分、71分[2]、85分[2]) 【4人】 ドルトムント(68分、79分、87分[2]) デュッセルドルフ(61分、68分[2]、79分) フライブルク(60分、68分[2]、90分) ホッフェンハイム(HT、66分[2]、90分) アウクスブルク(65分、79分、87分[2]) 【3人】 RBライプツィヒ(HT、69分、81分) ヴォルフスブルク(61分、74分、87分) バイエルン・ミュンヘン(71分、85分、89分)  最大5人の交代枠をフル活用したのは18クラブ中10クラブあった。全ての交代カードを切って5人を途中投入するためには、必ず1回以上の複数人同時交代が必要で、4人以上交代枠を使った全てのクラブがそれを行なっている。中にはヘルタ・ベルリンのように「3枚替え」を敢行したクラブや、短い時間で2列目より前を全員ごっそり入れ替えたクラブも多く見られた。  そして象徴的なのはハーフタイムに交代枠を使ったクラブの多さだ。6クラブが後半開始からフレッシュな選手を投入している。シャルケやフランクフルトのように、極めて悪かった前半の流れを断ち切る意味でハーフタイムに攻撃的な交代カードを切ったのは象徴的だった。60分台や70分台前半で3人以上を入れ替えていたクラブも多い。 ●交代枠2人増が示した可能性  このように交代枠が増えることで、「2枚替え」や「ハーフタイムでの交代」を積極的に行うことができ、選手の負傷リスクを分散させるだけでなく、戦術的な幅を広げることもできる。一気に複数選手を入れ替えてのシステム変更などにも踏み切りやすく、選手交代が試合の流れを変えるきっかけにもなりやすいだろう。これまで出場機会の少なかった若手選手などにもチャンスが広がる。  交代枠が5人に拡大されたことで、選手交代を戦術・戦略の一部に組み込んで運用することも十分に可能だ。これまでであれば疲労や負傷などを気にしながら慎重に交代のタイミングを図っていただろうが、フィールドプレーヤーの半分を入れ替えられるようになったことで、より大胆にカードを切ることができる。  ゲームプランの中で複数の選手をユニットとして考えてゲームプランを構築することも可能だろう。例えば守備的なチームであれば、中盤の選手にペース配分を考えることなくとにかくがむしゃらに走らせ、相手の攻撃を阻止させ、ハーフタイムや後半の早い段階でそのユニットごと交代させて再度中盤にエナジーを注入することができる。チーム全体の運動量と連動性を確保しつつ、相手の攻撃に90分間耐え切るためのプランといったところだ。  逆に選手層に余裕のある強豪になれば、前半と後半で異なる特徴を持った攻撃ユニットを送り出して相手を混乱させ、より効果的に攻め続けるようなことも考えられる。例えば前半にサンチョとアザール、後半にマルコ・ロイスとジェイドン・サンチョが襲いかかってくるドルトムントを相手にするのは、どんなチームにとっても嫌だろう。場合によっては異なるタイプのストライカーを複数起用して、攻撃パターンに変化をつけることもできる。  リードしている側が攻撃的なカードを切りやすくなることで、前がかりになって後ろが手薄になった相手はフレッシュなアタッカーたちに蹂躙され、さらに点差が広がって逆転が難しくなる可能性も考えられる。とはいえ3-1になってからカリム・ベララビとレオン・ベイリーという縦への推進力とスピードが武器の両ウィングを投入し、追加点を奪ったレバークーゼンのような事例が今後も出てくるかはしばらく続けてみなければわからない。うまい対抗策が見つかるかもしれないし、試行錯誤こそが新たな潮流を生み出す原動力となる。  交代枠の「3人」から「5人」への拡大は、過密日程と準備不足による選手たちの負傷リスクを軽減するとともに、戦術や戦略の幅を広げてサッカーの未だ見ぬ魅力を切り拓ける可能性を秘めている。一時的なルール変更ではあるが、新型コロナウィルスを乗り越えて再開したブンデスリーガが無事に継続し、これまでにない斬新なサッカーの奥深さを世界に発信してくれることに期待したい。 (文:舩木渉)

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