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女性たちの70年代──ピルの普及に中絶合法化、女性差別撤廃条約まで。

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VOGUE JAPAN

世界経済フォーラムが2006年から毎年発表しているジェンダーギャップ指数は、教育や経済、保健、政治における男女差を測り、「見える化」することで、男女平等の実現に向けての具体的な道筋を立て、達成に至る過程を皆でモニタリングしていこうというものだ。しかし、最新のジェンダーギャップ指数に、(想像していたとしても)がっくり肩を落とした人は多いだろう。日本は前年からさらに順位を下げ、153カ国中121位。「女性活躍」の太鼓をうるさいくらいに鳴らしたものの、他国の進歩に追いつくことはできず、先進国からは「男女差別がいまだ横行する国」というレッテルを貼られている。 歴史を振り返れば、70年代に世界の至るところで隆盛を極めた男女平等を訴える第二波フェミニズムは、さまざまな成果をもたらした。今でこそ、女性の多くが自分の人生を自分自身で設計できるが、この時代の女性たちの情熱や行動力に突き動かされ、女性たちの社会進出を促す制度改革や法整備が大きく進んだからだ。70年代を知り、そこから私たちが学ぶべきことを、3人の識者に取材した。

ピルと中絶合法化が与えた希望。

『「家族の幸せ」の経済学』の著者で経済学者の山口慎太郎は、60年代後半から70年代にかけてのアメリカで起こった二つの変化に着目する。経口避妊薬(ピル)の普及と、73年の「ロー対ウェイド」事件として知られる人工妊娠中絶の合法化だ。 今の時代を生きる私たちは、結婚する・しない、子どもを産む・産まないという人生の大きなイベントを、自ら選択し、決定できるようになった。けれど当時は、キリスト教信仰に根づく伝統的な家族観に支配された多くの国で、女性の避妊はもちろん、中絶など言語道断。違法とされていたのだ(今でもそういう国は少なくない)。 「当時のアメリカでは、保護者の同意なく、未婚の未成年女性にピルを処方することは違法とされていました。それが、72年にアメリカの多くの州で成年が引き下げられたこと、あるいは、未成年でも親の同意なくピルを処方してもらえることが明文化されたことで、女性の労働市場進出のハードルが大きく引き下げられました。さらに、それに続くロー対ウェイドによる中絶の合法化は、若く有望な女性たちにとって、まさに大きな希望だったはずです」 それらの成果は、数字にも明らかだ。山口が見せてくれた論文によると、未成年者の避妊ピルの使用が、全米各州で法的に認められるようになった70年代前半に、18歳から19歳の女性1000人あたりの出生数がおよそ85件から60件に、20歳から24歳では、およそ80件から55件ほどに減少している。こうして出産のタイミングを自らコントロールできるようになったアメリカの若い女性たち、とりわけ女子学生たちは、それまで結婚や妊娠によって諦めざるを得なかった弁護士や医師という厳しい職業上のトレーニングが必要とされるキャリアであっても、目指すことができるようになった。 「事実、70年時点では女子学生100人中一人にも満たなかった女子医学生と女子法学生の数は、80年には3倍以上に増えています(100人中3人)。これによって、70年から80年にかけて、アメリカの女性弁護士と女性裁判官の数は5.1%から13.6%へ、女性の医師も9.1%から14.1%へと、大幅に増えているのです」 こうして女性たちに新たな道が拓けたわけだが、現在のアメリカでは残念なことに、70年代の成果を無視した揺り戻しが起きている。昨年アラバマ州で、「ロー対ウェイド」を覆す中絶禁止法が成立し、世界に大きな衝撃を与えたのを知る人も多いだろう。

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