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武田薬品が“4000億円”で大衆薬ブランドを米外資に売った事情【プロはこう見る 経済ニュースの核心】

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日刊ゲンダイDIGITAL

【プロはこう見る 経済ニュースの核心】 「アリナミン」「ベンザ」など武田薬品工業を代表する大衆薬ブランドが外資の手に渡る。  武田は先週、全額出資の大衆薬子会社、武田コンシューマーヘルスケア(TCHC)の株式を来年3月末に米投資ファンド、ブラックストーン・グループに売却すると発表した。譲渡価格は2420億円。2021年3月期決算に売却益約1400億円を計上する。  TCHCは武田が16年に分社化して設立。20年3月期で売上高は608億円、営業利益は128億円。8700億円規模とされる国内大衆薬市場で約5%のシェアを持ち、6位につけている。  売却するのは、19年のアイルランド製薬大手、シャイアーに対する巨額買収で財務の負担が一気に膨らみ、大衆薬分野で成長投資を続けていくだけのゆとりがなくなったためだ。有利子負債はこれまで8300億円もの資産売却を重ねたにもかかわらず、6月末時点でまだ5兆円超。減損リスクが潜むのれんは約4兆円にも上る。売却を機に今後は消化器系疾患やがん領域などを対象とした医療用医薬品事業に一段と特化する。 ■最有力は大正製薬だったが…  TCHCを巡っては「コアビジネスではない」として武田のクリストフ・ウェバー社長が売却の意向を示唆して以来、国内同業他社や内外のファンドなどが買収に強い関心を寄せてきたとされている。そんな中、業界関係者らの間で「最有力売却先候補」と取り沙汰されてきたのが国内首位の大正製薬ホールディングス。武田側の想定売却額は当初、4000億円規模とみられており、その負担に耐えられそうな相手先は「大正くらいしか見当たらない」(金融筋)からだ。  ただ大正の有力ブランド「リポビタンD」「パブロン」はドリンク剤「アリナミンV」や「ベンザ」とまともに競合する。「下手をすると共食いで終わりかねない」(事情通)。それに4000億円という買収額は「無借金経営の好財務」(市場関係者)で鳴る大正にとっても重荷。「手元資金では賄えず、借入金に頼らざるを得ない」(関係者)羽目になる。  大衆薬に群がった訪日外国人消費がコロナ禍で蒸発して先行き不透明感も強まる中、結局は「手が出せなかった」(同)といったところか。 (重道武司/経済ジャーナリスト)

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