「私を任命する責任を負えないの?」学術会議、任命拒否の教授が官僚に直接聞いたこと
日本学術会議の任命問題をめぐり、過去の政府答弁との矛盾が注目を集めている。学術会議の人事は法律で定められており、過去の政府答弁では、首相による会員の任命は学術会議からの推薦を受けた上での「形式だけ」のものであり、法解釈上も政府側が「拒否はしない」「干渉しない」仕組みになっている、と明言されていたからだ。【BuzzFeed Japan/籏智 広太】 そのため、今回の菅義偉首相による6人の任命拒否には「解釈変更」が必要ではないかとの指摘もある。内閣法制局は10月6日の野党合同ヒアリングで内部文書を示し、「変更はしていない」との立場を示したが、専門家からは批判があがった。
まず、経緯を振り返る
そもそも、学術会議の会員の選定方法が「推薦制」になったのは1983年(中曽根康弘政権)のこと。 それまでは「公選制」だった選定方法が、現在のように学術会議側の推薦(当時は学術研究団体によるもので、2004年に会員によるものに変更)を受け、首相が任命する方式に変えられた。 当時の政府は「立候補者数の減少」など「学者の学術会議離れ」をその理由にあげていたが、当時の国会では、この「推薦制」に反対する声も野党側からあがっていた。当時も政府内に学術会議に対する批判的な目線があったことから、今回のような「恣意的な人事介入」を懸念していたのだ。 一方で、当時の政府側はそうした懸念には当たらないと答弁してきた。 5月の参院文教委員会で、手塚康夫・内閣官房総務審議官(当時)は同じ日の委員会で首相による任命は「形式的であり、実質的ではない」と述べている。また、高岡完治・内閣官房参事官も同日の委員会で、以下のように述べている。 《この条文の読み方といたしまして、推薦に基づいて、ぎりぎりした法解釈論として申し上げれば、その文言を解釈すれば、その中身が二百人であれ、あるいは一人であれ、形式的な任命行為になると、こういうことでございます。》 高岡参事官は「法律案審査の段階におきまして、内閣法制局の担当参事官と十分その点は私ども詰めたところでございます」とまで言い切った。 さらに国務大臣である丹羽兵助・総理府総務長官も「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない」と「歯止めをつける」「干渉しない」と述べ、中曽根康弘首相(当時)も「政府が行うのは形式的任命にすぎません」と明確に答弁しているのだ。