「障害者は喜んで農園で働いている」はずが…国会がNGを出した障害者雇用〝代行〟ビジネス 大手有名企業を含め800社が利用
企業や官公庁は従業員の一定割合以上、障害者を雇うことが法律で義務付けられている。障害者が社会参加でき、一緒に働くことで障害への理解や「共生」が進むという理念があるからだ。しかし、障害者雇用を負担に感じ、法で定められた割合を満たせていない企業も多い。そんな中、貸農園などを企業に提供し、働きたい障害者も紹介して雇用を事実上、代行するビジネスが広がっている。利用している企業は大手有名企業を含め約800社。運営事業者は「雇用の場を創出し、障害者が喜んで働いている」とPRする。ただ利用企業の大半は農業とは無関係で、多くの場合、農作物が市場に出ることはない。「お金を払って雇用率を買っているようなものだ」と物議を醸すこのビジネス、国会でも取り上げられ、政府が動き出す事態になった。(共同通信=市川亨) ▽引き上げられる法定雇用率 障害者雇用促進法は現在、一定規模の企業は障害者を従業員の2・3%以上雇うよう定めている。国や自治体は2・6%だ。この「法定率」を下回ると、対象企業は不足1人につき原則、月5万円の「納付金」を徴収されるが、達成企業は2022年6月現在、半分未満にとどまる。
法定率は、10年前は1・8%。そこから、実際の雇用率の上昇に伴い徐々に引き上げられてきた。厚生労働省は来年4月に2・5%、26年にはさらに2・7%に引き上げる予定だ。 ただ、障害者の雇用に二の足を踏む企業も多い。企業から見て「雇いやすい」身体障害者や軽度の人は既に雇用されている。働きたい知的障害や精神障害の人は多くいるものの、仕事内容や勤務時間などに配慮が必要なためだ。一方で、法定率を満たしていないと、企業はコンプライアンス(法令順守)意識を問われるほか、官公庁の入札で不利になることもある。 ▽「三方よし」 そこで2010年ごろに登場したのが、貸農園を活用した障害者雇用ビジネス。仕組みはこうだ。 (1)働きたい障害者と指導役を企業に紹介し、就労場所として貸農園を提供 (2)企業から人材紹介料や農園利用料を受け取る (3)各企業が障害者らと雇用契約を結ぶ (4)複数の企業の障害者を農園に集め、野菜などを栽培する