「半グレにもランクが」当事者が語った闇社会の実像
(廣末登・ノンフィクション作家) 前回の記事では、カオス化する裏社会を概観した。筆者が半グレの犯罪に警鐘を鳴らすのは、半グレは加入のハードルがとても低く、容易だからである。しかし、その判断は人生を崩壊させる危険を孕んでいる。 ■ 食うか食われるかの闇社会 筆者は、犯罪学の学究、ノンフィクション作家、更生保護の就労支援、保護司という様々な視点から、半グレと称される人たちの実態を見てきた。実際に、反社といわれる人たちから半グレを紹介され、街角で取材を敢行した。 そうした諸活動で得られた情報に基づき、今月、『だからヤクザを辞められない―裏社会メルトダウン』を新潮新書から上梓するに至った。 闇バイトや先輩後輩の繋がりから、半グレの一員として特殊詐欺などの犯罪に手を染めると、銀行口座が作れないなどの厳しい社会的制裁を受ける。そうした実態を知らずに犯罪を行い、人生を棒に振った人たちを、筆者は数多く目にしてきた。 拙著には、このような過ちをおかす若者が、一人でも減じて欲しいという願いが込められている。 ときどき誤解している若者もいるが、裏社会とは一攫千金を簡単に許す生易しい環境ではない。食うか食われるかのサバイバルである。今回は、そのカオス化した裏社会の住人である半グレ当事者の話に、耳を傾けてみたいと思う。 (前回記事)ヤクザ辞めても「元暴アウトロー」しか道がない現実 https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63512
■ 「食う半グレ」と「食われる半グレ」 ◆半グレ5(30代半ば)の証言 単なる不良だったのは16歳の時までになりますね。「半グレ」と「ただの不良」との境界線ですか? カネの出どころですね。半グレは多くの場合、本職(ヤクザ)からになる。ただし、美味しい話はヤクザがシノいで、割に合わないリスキーな仕事するのが半グレ。つまり「残りっ屁」が半グレの仕事です。 あとは、ヤクザはケツ持ち(後ろ盾)を匂わせてくるけど、実際には持ってくれない。半グレ・グループにはランクがあって、ヤクザは半グレ第1グループにネタを持ってくる。第1グループは、下の第2グループに実行させて、カネを分ける。犯罪がメクれたら、第2グループはトカゲのシッポ切り。だから、食う半グレと食われる半グレがいるんです。 世の中から半グレと言われる人たちは、実は半グレだという認識がないんじゃないですかね、むしろヤクザの一端だと思ってる。自分の中で勘違いしているんです。自分は組員じゃないけど、バックにはヤクザがついていると思っている。だけど、実際には何もしてくれない。所詮、半グレなどは“爪楊枝”ですよ。「先が曲がったら捨てようか」という程度。 ヤクザの盃をしていたら、10万円の上納で組織から評価される。でも半グレは、50万円上納しても評価されない。ケツを持つと思うから組織の為に一生懸命働いても、結局のところ半グレは使い捨てです。せいぜい、「(正規の)アメックスカード作ってやるから」という程度。ここでも「だからナンボくれ」と言ってくる。金額は20万円くらいですかね。 半グレのリーダーも同様に、子分が下手打っても、何もしてくれません。 じゃ、なぜ自分は盃しなかったか――ひと言で言うと、(ヤクザに)向いていないから。グループが好きではないんです。人が集まると、必ず裏切りがある。自分が一人親方でやっていたら、やりかぶっても自己責任です。 シノギのネタ(情報)は、基本、ヤクザからの情報です。「行けそう」と思えば、自己責任で受けるだけ。食うために複数の草鞋を履く(シノギをする)必要がありました。たとえば、銀行融資詐欺。ブラックの客をニコイチで用意する(融資を受ける者と保証人)。融資の審査担当を抱き込んで、350万円融資させる。関係者に手数料を払っても、200万はこちらの儲けになった。